11:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:02:49.57 ID:CGXDMCHp0
*
散々喚き散らした女性を軽くあしらい、診断室を追い出した青年は、息をついてカルテをベッドの上に放り投げた。
八畳ほどの白い部屋だった。
見た目は普通の、内科の診断室に見える。
12:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:03:31.54 ID:CGXDMCHp0
「汀、もう寝る時間だろ」
「隣が煩かったから」
「悪かったよ。もう寝ろ」
13:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:04:35.85 ID:CGXDMCHp0
「今度は何を買ってくれるの?」
汀がそう聞くと、圭介は軽く微笑んでから言った。
「3DSで欲しいって言ってたゲームがあるだろ。あれ買ってきてやるよ」
14:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:05:24.48 ID:CGXDMCHp0
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その「患者」が現れたのは、それから三日後の午前中のことだった。
夏の暑い中だというのに長袖を着た、女子高生と思われる女の子と、その母親だった。
圭介は、座ったまま何も話そうとしない女の子と、青ざめた顔をしている母親を交互に見ると、部屋の隅の冷蔵庫から麦茶を取り出して、紙コップに注いだ。
15:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:06:17.13 ID:CGXDMCHp0
「赤十字の病院でも……同じ診断をされました。もう末期だとか……」
「はい。末期症状ですね。言葉を話さなくなってからどれくらい経ちますか?」
「四日経ちます……」
16:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:06:57.46 ID:CGXDMCHp0
「日本に自殺病が蔓延するようになって、もう十年ほど経ちますが、一向にその数は減らない。むしろ増え続けています。そして、娘さんもその一人になりかかっています」
資料をデスクの上に放って、彼は椅子に腰掛けた。
「どうなさいますか?」
17:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:08:25.34 ID:CGXDMCHp0
二回、含みを加えて言うと、圭介は微笑んだ。
「その代わり、娘さんは最も大切なものをなくします」
「仰られている意味が……」
18:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:09:44.08 ID:CGXDMCHp0
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「急患だ。即ダイブが必要だ」
車椅子を押しながら、圭介が言う。
19:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:10:26.98 ID:CGXDMCHp0
「何をするんですか」
それを軽くいなした圭介に、彼女は金切り声を上げた。
「娘の命がかかっているんですよ! それを……それをこんな……こんな小娘に!」
20:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:11:02.15 ID:CGXDMCHp0
「何を……」
「二度同じことを言わさないでください。貴女が邪魔だと言っているんです」
ネクタイを直し、彼はメガネを中指でクイッと上げた。
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