過去ログ - 少女「ずっと、愛してる」
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13:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:16:24.23 ID:A45p+aH70
寝息が、聞こえる。
白青髪の少女と、黒髪の少女。
二人の姉は……愛寡と彼の会話にも起きる気配を見せなかった。
どれだけ長いこと、彼の首を絞めていただろうか。
どんなに絞めても。
以下略



14:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:17:00.21 ID:A45p+aH70
太陽が沈んで行き、そして空に満天の星がきらめき始める。どこまでも……何処までも続く電灯のように。漆黒の空間のどこまでも遠くに、ビーズ玉よりも小さな、小さな星達がきらめき始める。
愛寡は、彼の首を絞める手を緩めていなかった。もはや渾身と言ってもいいほど、全体重をかけて締め付けていた。
彼の唇や顔は土気色に変色し、目は閉じられ、既に息はない。
二人の姉は、ピクリとも動いていない。
いつの間にか寝息は聞こえなくなっていた。
以下略



15:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:18:38.54 ID:A45p+aH70
体中が冷え切り、指先が真紫になった頃。
やっと愛寡は彼から手を離した。
そしてうずたかく体に積もった雪を払おうともせず、吹雪の中で肩を落とした。

――どうして許してくれるの?
以下略



16:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:19:08.58 ID:A45p+aH70
カサリ、という音がして。物言わぬ死体と化した彼の口が動いた。殆どミイラ。骨と皮のその口から、握り拳大の、手の平のような足をした黒光りする背中を見せた昆虫が這い出してくる。
それは次から次へと……何処にそんなに隠れていたのかというくらい、雪崩のようにミイラ死体の口から溢れ出てきた。
それは、二人の姉の死体からも同様だった。
蟲……蟲。
黒い……おぞましいそれは、愛寡の足を噛み、腕を噛み。耳に足を突っ込み……口から体の中に入ろうと足を動かし。
以下略



17:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:19:39.91 ID:A45p+aH70
それは……地平線の果てまでどこまでも続く黒蟲の洪水だった。地面がどこまでも……どこまでもそのおぞましい昆虫に埋め尽くされている。
それが、まるで降りに放り込まれた餌に群がるように愛寡に向かって雪崩を為して押し寄せてきているのだ。
怖さも、何もなかった。
体の皮を蟲の鉤爪のような口で食い破られながら、愛寡はただ、ぼんやりと足元……先ほどまで首を絞めていた彼がいた場所に向けていた。蟲……蟲。どこまでも蠢くそれに覆い隠されて、もはや見えない。


18:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:20:17.79 ID:A45p+aH70
――どれだけ私を傷つけているかも知らず
――あなたは、その下で微笑んでいるの?
――あなたは、それでも私に
――ここにいろと言うのですか?
――どうして
以下略



19:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:22:01.20 ID:A45p+aH70


 ぼんやりと、外を見ていた。
ああ……今日も一日が始まる。
今日も……始まってしまう。
以下略



20:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:22:45.68 ID:A45p+aH70
普通は横に広がるのが定石だ。つまり一つドームを建造して、そこの人口が飽和状態になれば別の場所にもう一つ建造する。
しかし……ここ、サバルカンダのドームは、その定石をとこなる建築法をしていた。つまり、横ではなく下……縦に伸びているのだ。
一階層が最も巨大で、その直径はゆうに五十キロは越える。そしてそのドームの下に、直径三十キロほどの二階層。
全体で五階層までがある。
ドームの中心にはバベルタワーと呼ばれる、三百メートル頂点に達するほどの長い、メインシャフトが存在していた。そこが全ての階層の統括機であり、空調管理などは全てタワーが行っている。
以下略



21:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:23:25.11 ID:A45p+aH70
木や芝生……花壇などがいたるところに設けられており、天井のスクリーンには暖かい光を投げ落とす人工太陽が投影されている。
この時代、植物はかなりの貴重物だ。それどころか、一つ育て方を間違えばあっさりとお釈迦になってしまう贅沢な嗜好品。
しかしそれが……このサバルカンダの最上階には、掃いて捨てるほど存在している。
愛寡はその光景を憂鬱に見つめながら、自室のドアがノックされたのを聞き、振り返った。
小ぢんまりとした部屋だった。
以下略



22:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:24:00.42 ID:A45p+aH70
入ってきたのは、愛寡と同じくらいの背をした、猫背の青年だった。体がひょろ長く、しかし骨格がしっかりとしているのが、ピッシリとした黒いスーツの上からでも分かる。髪は鮮やかな茶。前髪で目が完全に隠れてしまっていた。
猫背や、おどおどした歩き方が癖になっているのか。首を前に突き出しながら部屋の中に入り込む。
左手でドアを閉め、猫背の青年は愛寡を見てニッ、と不恰好に微笑んだ。

「おはようございませ、師匠」
以下略



23:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:24:37.81 ID:A45p+aH70
そっと近づいて、そして愛寡は猫背の青年の頭を胸に抱いた。
そこで初めて、青年は愛寡が薄い寝巻き一つであることを自覚したらしい。耳まで顔が赤くなり、硬直した青年の頭を、愛寡はその豊満な胸に押し付けた。
彼の首筋の髪を掻き分けると、丁度右頚動脈の部分にビー球程のガラス質の球がうずもれていた。
二つ。
左頚動脈の方にもある。白と黒に光るそれを指先で撫で、愛寡は彼の頭を離した。
以下略



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