過去ログ - 少女「ずっと、愛してる」
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135:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:02:25.61 ID:vAi26PND0
「外に出るのは初めてだよ。こんなところがあったんだねぇ」

「何だ、姫巫女ってのはずっとあそこに閉じ込められてんのか?」

「うん。出ようとするとぶたれるよ。酷いと縛られたりする」
以下略



136:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:03:00.99 ID:vAi26PND0
「ま……まぁ、何だ。いきなり夜這いに行っちまって悪かった。待ちきれなくてなぁ。な、どうよ? 俺の花」

それを聞いて、カランはポケットに手を入れて小さな造花を取り出した。

「素敵。どのくらいかかったの?」
以下略



137:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:03:30.96 ID:vAi26PND0
――三年。

普通、男性が女性に送る求婚の意であるサクサンテの花は、一ヶ月ほどの時間をかけて製作される。その……実に三十六倍の時間をかけて製作されたのだ。
そしてそれは、同時に……。
ゼマルディが三年も前から……いや、もしかしたらもっと前から自分のことを想っていたという事実に他ならなかった。
以下略



138:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:04:05.15 ID:vAi26PND0
突然放たれた言葉に、彼は反応をすることができなかった。しばらく彼女の顔を見つめてから、取り繕うように笑ってみせる。

「は……はははっ、よせよ。どっからどう見ても出来そこないだぜ? 今日だってお前が騒いだら、無理矢理手篭めにしちまおうとさえ思ってたんだ。実を言うとな」

「……」
以下略



139:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:04:38.90 ID:vAi26PND0
「こんな風に」

そう言って手をパッと上に広げてみせる。それをポカンと見て、そしてゼマルディは面白そうに喉を鳴らした。

「カカッ……そうか姫巫女から見りゃ、あいつくせーのか」
以下略



140:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:05:08.04 ID:vAi26PND0
「…………」

「私の初めての人だもの。それくらいじゃなきゃダメよ」

サラリと言い放って、そして彼女はもう一度くしゅんとくしゃみをした。
以下略



141:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:07:44.10 ID:vAi26PND0
5 サクサンテの花

 どうもおかしい。
姉が砂っぽいのだ。

以下略



142:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:08:19.71 ID:vAi26PND0
女性というものは、男性よりも一所にまとまろうとする性質がある。それが子供であり……尚更全体で百人前後しかいない場所だったとしたら……。
そう、彼女達は産まれてこの方、室と言われる広さ二キロメートル四方ほどの施設を出たことがなかった。そこに現在入れられている姫巫女候補の娘達は、全体で七十人。乳幼児から二十二歳まで。その年の娘達が入っている。

――白い一族。

以下略



143:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:09:07.36 ID:vAi26PND0
服を脱ぎながら、ヤナンは鼻歌を歌っている姉のことを見回した。髪なんて滅茶苦茶で、所々汚い埃の塊がくっついている。顔も薄汚い茶色い砂の膜が張っていた。汗で固まったらしい。
しかし……。
ここ、室ではそんなに砂が舞い散るところもないし。何より、運動が大の苦手の姉が深夜一人で道場に行くとは到底思えない。

「ん?」
以下略



144:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:09:37.06 ID:vAi26PND0
しばらく声を出すことが出来ずに、ひょいひょいと服をバスケットに放り込んでいくカランを凝視する。
しばらくして妹の視線に気がついたのか、カランはそれを追い……自分の肩から背中に折りたたむようにしていた長く、立派な骨羽を動かした。
壮言といってはばかりない、とてつもないほどの澄んだ音色だった。
白い一族の娘は、羽生やしの儀式のあと、骨のような器官を得る。
それは主に、彼女達の心を表すために使われる器官。いわゆる第二の『顔面』と同様の役割を持つものと揶揄した方が近いかもしれない。
以下略



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