過去ログ - 少女「ずっと、愛してる」
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139:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:04:38.90 ID:vAi26PND0
「こんな風に」

そう言って手をパッと上に広げてみせる。それをポカンと見て、そしてゼマルディは面白そうに喉を鳴らした。

「カカッ……そうか姫巫女から見りゃ、あいつくせーのか」
以下略



140:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:05:08.04 ID:vAi26PND0
「…………」

「私の初めての人だもの。それくらいじゃなきゃダメよ」

サラリと言い放って、そして彼女はもう一度くしゅんとくしゃみをした。
以下略



141:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:07:44.10 ID:vAi26PND0
5 サクサンテの花

 どうもおかしい。
姉が砂っぽいのだ。

以下略



142:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:08:19.71 ID:vAi26PND0
女性というものは、男性よりも一所にまとまろうとする性質がある。それが子供であり……尚更全体で百人前後しかいない場所だったとしたら……。
そう、彼女達は産まれてこの方、室と言われる広さ二キロメートル四方ほどの施設を出たことがなかった。そこに現在入れられている姫巫女候補の娘達は、全体で七十人。乳幼児から二十二歳まで。その年の娘達が入っている。

――白い一族。

以下略



143:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:09:07.36 ID:vAi26PND0
服を脱ぎながら、ヤナンは鼻歌を歌っている姉のことを見回した。髪なんて滅茶苦茶で、所々汚い埃の塊がくっついている。顔も薄汚い茶色い砂の膜が張っていた。汗で固まったらしい。
しかし……。
ここ、室ではそんなに砂が舞い散るところもないし。何より、運動が大の苦手の姉が深夜一人で道場に行くとは到底思えない。

「ん?」
以下略



144:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:09:37.06 ID:vAi26PND0
しばらく声を出すことが出来ずに、ひょいひょいと服をバスケットに放り込んでいくカランを凝視する。
しばらくして妹の視線に気がついたのか、カランはそれを追い……自分の肩から背中に折りたたむようにしていた長く、立派な骨羽を動かした。
壮言といってはばかりない、とてつもないほどの澄んだ音色だった。
白い一族の娘は、羽生やしの儀式のあと、骨のような器官を得る。
それは主に、彼女達の心を表すために使われる器官。いわゆる第二の『顔面』と同様の役割を持つものと揶揄した方が近いかもしれない。
以下略



145:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:10:06.66 ID:vAi26PND0
いや……それよりも。
そんなことよりも。
姉の羽は、立派過ぎた。
グループの有力候補とされている少女達のどんな羽よりもすらりとしていて……そし何より銀色に透き通っていた。向こう側が見える。こんな綺麗な羽は見たことがない。強い光がある場所で覗いたら、ひょっとしたら虹が見えるかもしれない。
もしもこの羽が周りの子に見つかってしまったら。
以下略



146:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:10:38.77 ID:vAi26PND0
彼女の背中に伸びた、姉のものとは比較にならないほどの小さな羽根がくぐもった音を発した。
極薄のワインカップを柔らかく叩き合わせたような音を発しながら、カランは呆然としている妹に、にっこりと笑いかけた。

「昨日いきなり生えてきたの。不思議ね」

以下略



147:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:11:17.53 ID:vAi26PND0
「え……だから、私はどこにも……」

「あいつに会ったの? ねぇ、だから羽生えたんだ? ルケン様がいくらやっても生えなかったのに、ねぇ、私らのことバカにしてるのお姉ちゃん?」

「ば、馬鹿になんてそんな」
以下略



148:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:11:48.28 ID:vAi26PND0
(この女……)

確かに、ヤナンはその時そう思った。
血の繋がった実の姉のはずなのに、そう思ってしまったのだ。

以下略



149:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:12:20.54 ID:vAi26PND0
唯一頼りにしていた妹に理解不能な罵倒を浴びせられて、完全にカランは萎縮してしまっていた。羽を彼女から隠すように背中に折りたたんで、そしていそいそと服を着ようとする。

「怒らないで。お姉ちゃん、何か悪いことしちゃったんなら謝るから」

「……怒ってないよ」
以下略



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