301:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:18:28.32 ID:3SORN3Q00
10 リセット
今日も、その家に帰る。
ゼマルディはいつも決まった時間に決まったアパートのドアを開ける。
ベッドの上には上半身を起こして外を見ている妻の姿があった。
302:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:19:06.06 ID:3SORN3Q00
「あぁ、マルディの親戚の人? 誰でしたっけ……」
「バカ、俺がマルディだ」
「あら? そうだったかしら……」
303:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:19:58.28 ID:3SORN3Q00
「ありがとう。高かったでしょ?」
「いーんだよ。金は全部ドクが出してくれるからさ」
「ドク? 誰だっけ?」
304:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:20:46.04 ID:3SORN3Q00
濁った左目でカランを一瞥し。水道を回して茶色く濁った水でリンゴを洗う。それをふきんで丹念に拭いてから、彼はベッドに近づき、妻の手にそれを握らせた。
「ほら」
「何、これ?」
305:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:21:13.63 ID:3SORN3Q00
「美味しいねぇ」
「後で飯作ってやるから、少し待ってろな」
「うん」
306:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:21:40.21 ID:3SORN3Q00
逃げる途中で、よりにもよってルケンに投げつけられた肉切り包丁が、彼女の大腿骨を貫通して神経を切り離してしまったのだ。
初期治療の遅さが致命的になった。
もぞもぞと毛布の下で足を動かしたカランの股間に手を当て、慌ててそれを止める。
「どうした、トイレか?」
307:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:22:16.67 ID:3SORN3Q00
毛布の一部から覗いているのは、義足の接続部だった。
切断された足の切断面にはめ込んで、そして義足に接続するコネクタの役割を果たす器具だ。
「いや……まぁ、程ほどにな。俺は料理してるから、何かあったら声を出せよ」
308:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:22:41.77 ID:3SORN3Q00
「トイレ行きたくなったら言えよ」
「うん」
そこまで言って、ゼマルディは彼女に見えないように深くため息をついて背中を向けた。
309:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:23:10.65 ID:3SORN3Q00
ボロボロで繋ぎだらけの白衣を方に羽織り、中はやはり繋ぎとコーヒーの染みだらけのスーツ姿だった。
彼は玄関に足を踏み入れると、きょとんとしているカランを見て嬉しそうに片手を振ってみせた。
「やほ。元気かいカランちゃん」
310:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:23:41.96 ID:3SORN3Q00
「ちょっとマルディ、三十分くらい借りていっていいかな? すぐに返してあげるからさ」
「うん、いいよ。マルディ、ドクって人が呼んでるよ」
頷いてゼマルディは水道を止め、白衣の青年に近づいた。
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