過去ログ - 少女「ずっと、愛してる」
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376:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:11:20.69 ID:EmuY6hvN0
動転していた。
気づかなかった。
いざ気づいてみると、どうして分からなかったのかが分からない。

――カランの羽。
以下略



377:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:11:49.40 ID:EmuY6hvN0
そこで。
ドクの目が、部屋の片隅に無残に転がっていたカランの骨羽の残骸を目に留めたと同時に。
目の前の化け物が、背中を丸め力を込めた……と思った瞬間、跳躍した。
掻き消えた。
飛び上がったと思ったのはつかの間で、見逃すはずもない巨体が消えた。まるで蜃気楼のように、フッと無くなったのだ。
以下略



378:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:12:34.35 ID:EmuY6hvN0
腰が抜けた。
いい年をして、と自分で自分にどこか冷静な頭が突っ込む。しかし現実はそう単純なものではなかった。ドクは自分のことを少なからずとも逆境に強い人間だと思っていたし、げんにその性分のおかげで今まで無事に生きてきた面も多々あった。
しかしこれは違う。
何かと明確な事実を提示することは出来ないが、全くの別物だった。
圧倒的な絶望感。力の差……どう足掻いても太刀打ちできないという、『種』の差。その恐怖を間近で感じすぎてしまったのだ。理性は冷たく事実、そして最適な行動を算出しているが、本能に近いところで体が動かない。
以下略



379:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:13:06.83 ID:EmuY6hvN0
――角。

角だった。水牛の角のように尖り、先端は獲物を串刺しに出来るかのごとく、鋭い輝きを発していた。
頭を振り、大男はまた腕を振りかぶった。
そしてためらいもなくドクの頭に爪を突き刺そうとして……。
以下略



380:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:19:01.48 ID:EmuY6hvN0
「よかった……」

「ルルルル……」

「ちゃんと……変身、できたね……」
以下略



381:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:19:27.48 ID:EmuY6hvN0
痛みと命が薄れていく感覚の中、ニッコリと。
少女は異形と化した夫の顔に向かって微笑んでみせた。軽く首を傾げ、目を細める。

「あなたは…………前に、こう、聞いたことがあったね……」

以下略



382:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:19:59.55 ID:EmuY6hvN0
「私も聞くね…………」

「…………」

「これで……私のこと…………」
以下略



383:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:20:28.87 ID:EmuY6hvN0
一秒経ち。
二秒経ち。
阿鼻叫喚と、警報が鳴り響く空の中。
唖然としているドクと、微笑む妻の前で。
呆然とし、停止し、そして泣きそうに顔を歪めて。
以下略



384:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:21:00.55 ID:EmuY6hvN0
ガタガタガタガタと周囲の家具や壁……いや、空間それ自体が怪物の体中から噴出する白い煙の圧力に押されて、振動し始める。空気の粒子から震えているようだった。
夫の雄たけびを聞き、その叫び声が途切れた後。カランは疲れきった顔で嬉しそうに目を閉じた。

「ちょっと……寝るね…………」

以下略



385:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:21:34.63 ID:EmuY6hvN0


 ルケンが市街地に入ったのは、トレーラーの格納庫で大惨事を起こしてから、一時間も経たないでのことだった。血液と内臓、そして汚水でズブ濡れの格好のまま、ポケットに手を突っ込んでニヤニヤしながら道路を踏み閉め、歩く。
齢十二歳前後の彼は、右手でズルズルとずた袋のようなものを引きずっていた。
若い女性の……いや、人間だったものの死骸だった。髪を掴んで無造作に、殆どミンチとなったそれを引き、地面に黒いシミを後びかせていく。
以下略



386:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:22:14.42 ID:EmuY6hvN0
パン、パンと笑いながら手を叩き、少年は悠然と歩くと、道の脇で腰を抜かしていた五歳程度の女児の前で立ち止まった。この騒乱の中、親とはぐれてしまったらしい。目を飛び出しそうなまでに見開いて、口をわななかせている。
それに向かって何のためらいもなく広げた手を伸ばし……。

次の瞬間、ルケンは猫のような動作で反射的に。

以下略



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