過去ログ - 少女「ずっと、愛してる」
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384:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:21:00.55 ID:EmuY6hvN0
ガタガタガタガタと周囲の家具や壁……いや、空間それ自体が怪物の体中から噴出する白い煙の圧力に押されて、振動し始める。空気の粒子から震えているようだった。
夫の雄たけびを聞き、その叫び声が途切れた後。カランは疲れきった顔で嬉しそうに目を閉じた。

「ちょっと……寝るね…………」

以下略



385:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:21:34.63 ID:EmuY6hvN0


 ルケンが市街地に入ったのは、トレーラーの格納庫で大惨事を起こしてから、一時間も経たないでのことだった。血液と内臓、そして汚水でズブ濡れの格好のまま、ポケットに手を突っ込んでニヤニヤしながら道路を踏み閉め、歩く。
齢十二歳前後の彼は、右手でズルズルとずた袋のようなものを引きずっていた。
若い女性の……いや、人間だったものの死骸だった。髪を掴んで無造作に、殆どミンチとなったそれを引き、地面に黒いシミを後びかせていく。
以下略



386:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:22:14.42 ID:EmuY6hvN0
パン、パンと笑いながら手を叩き、少年は悠然と歩くと、道の脇で腰を抜かしていた五歳程度の女児の前で立ち止まった。この騒乱の中、親とはぐれてしまったらしい。目を飛び出しそうなまでに見開いて、口をわななかせている。
それに向かって何のためらいもなく広げた手を伸ばし……。

次の瞬間、ルケンは猫のような動作で反射的に。

以下略



387:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:22:46.75 ID:EmuY6hvN0
いつの間にか、顔面が蒼白になっていた。
それは反応。
そう、紛れもない単純な反応だった。
心臓が破裂するのではないかというくらい激しく脈動していた。
それはルケンにとって、産まれて初めて感じたモノだった。
以下略



388:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:23:15.30 ID:EmuY6hvN0
鳥肌が立っていた。
何が起こったのか、分からなかった。
気づいた時にはもう遅かった。
何の気配も感じさせずに。
いきなりルケンは、後頭部を何か金属質のモノに鷲掴みにされた。
以下略



389:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:23:51.78 ID:EmuY6hvN0
予想外のその事実により固まってしまったのは、大きかった。
万力のような力で後頭部を締め付けられ、次いで首のみを支えにして小柄な少年の体が軽々と一メートル以上も持ち上げられた。
抵抗しようとした途端。
背後に立ったその『人物』は、ルケンを掴んだまま、腰を曲げて野獣のように跳躍した。エンジン。それを連想させる白く、悪臭を孕んだ水蒸気を体中から噴出させながら。
ゼマルディはその巨体ごとルケンを押さえつけ。
以下略



390:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 20:28:35.89 ID:EmuY6hvN0
お疲れ様でした。今日の投稿はここまでになります。

毎回お付き合いいただいて、ありがとうございます。

寒いですが、皆様も体調を崩さないようお気をつけくださいね。
以下略



391:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/16(木) 20:04:25.14 ID:Z6fjuYRs0
こんばんは。12話の投稿をさせていただきます。


392:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/16(木) 20:08:39.28 ID:Z6fjuYRs0
12 音速の人

 彼女はいつもと同じように、そこにいた。
うずくまって震える彼を痩せた腕で、しかし彼のものよりもはるかにしっかりとした温かさで背中から抱いて、さすっていた。
名前も、顔も思い出せなくなっていた。
以下略



393:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/16(木) 20:09:14.08 ID:Z6fjuYRs0
それ以前に……逃げて、それからどうする?
逃げて、逃げて、逃げて。その先には一体何があるのだろうか。いずれ死んでしまうであろう、この忘却の時間を繰り返して、心身ともに崩れていって、結局は何が残るんだろうか。
そもそもが間違いだったこの恋には、ちゃんとした結末なんてありようもないのに、それを望んでしまっている自分がいた。
自覚してしまった途端、自制していた何かが崩壊してしまった。
ただ、彼は恐ろしかった。
以下略



394:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/16(木) 20:09:51.66 ID:Z6fjuYRs0
――分かっていたことじゃないか。

分かっていたことではないのか?

そんなことは重々承知の上で、自分は動いたのではなかったのか?
以下略



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