42:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)[saga]
2012/05/19(土) 15:59:59.90 ID:oO9qLT0Vo
重い木の板で作られた扉はある程度まではスムースに動くから、立てつけが悪くなったという訳でもなさそうだ。
じゃあ、どうして扉が動かないのだろう、少なくとも昨日の朝はきちんと開いたはずだ。
織莉子は手荒なことが好きじゃなかった。
でも、こうまで厄介な扉にはそうも言ってはいられない。
43:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)[saga]
2012/05/19(土) 16:01:02.42 ID:oO9qLT0Vo
織莉子がこの写真を知ったのは小学校高学年に上がってからのことだった。正確には、この絵が飾られた父の書斎に入ったのが、と言うべきか。
と言うのも、高価な調度品で彩られたこの部屋全体の資産価値というものはかなり大きく、そこに分別のないガキンチョが入ってきて荒らし回られたら困る、というわけだ。
過去にそういった事が幾度かあったのか、幼少の子はこの部屋に入れさせてはならない、というのが美国家に古くからあるルールだった。
11歳の誕生日を迎えた日、織莉子は初めてこの部屋に入る事を許された。
44:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)[saga]
2012/05/19(土) 16:01:44.48 ID:oO9qLT0Vo
人間の希薄になった原始的感覚は、まだ同族の死を明瞭に知覚できる程度には鈍磨しきってはいなかったようだ。
更に色を濃くし始めた死臭が、その事実を織莉子の本能に突き付ける。
でも織莉子の脳は、それをそうと認識することを拒絶した。
大部分の人間がそうであるように、彼女もまた卑近な者の死をそう簡単には受け入れる事が出来なかったわけだ。
45:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)[saga]
2012/05/19(土) 16:03:53.20 ID:oO9qLT0Vo
以上、第二話前半でした。
見滝原のモデルは前橋と聞いて、その辺りの名士なら養蚕で身を立てたのかなぁ、と思ったので、こんな設定になりました。
語り部と聞き手はまだ秘密、うふふ。
46:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/05/19(土) 18:10:30.67 ID:e7Vs9snco
……織莉子がドア開けたことがトドメだったら欝いな……
いや、死後の姿見る限りあり得ないのはわかってるけど
47:以下、VIPPERに代わりましてGUNMARがお送りします[saga sage]
2012/05/20(日) 03:13:29.34 ID:BMh2zevz0
とても読み易い、のみならず読ませる小説。
引き込まれるのは改行の仕方だけではなくて、軽妙な語り口や豊富な語彙から来る表現力の所為でもあると思う。
正直、俺も自室に引き篭もってshitしてるわ(この文章に)。
48:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage]
2012/05/20(日) 14:47:40.24 ID:Jdmnkfsdo
文章に引き込まれるのもあるけど、
キリカがこんなにちゃんとキリカしてるSSは貴重
これはもう楽しみにするしかないじゃない
49: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/06/07(木) 01:15:59.07 ID:gQCy6oSp0
だいぶ間が開きましたが、これより投下いたします
ついでに識別として鳥付けてみるテスト
50: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/06/07(木) 01:16:50.34 ID:gQCy6oSp0
3人は暗がりの中を歩いた。先頭はキリカで真ん中が織莉子、後ろには巴マミが尾いている。
どろどろとねばついた汚水が膝上まである排水溝のような真っ暗闇のトンネルで、織莉子の創りだした水晶球がランタンのように輝いている。
当然、全員の衣装は既にぐちゃぐちゃで、白、黒、黄色を基調としたそれぞれの格好は見るも無残な有様と成り果てていた。
嗚咽しそうな臭気に全員が顔をしかめる。
51: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/06/07(木) 01:17:39.22 ID:gQCy6oSp0
結界内部は荒涼としていた。
スクリーンのような滑らかさを持ったビルディングがいくつもそびえ、それらは胸を締めるような圧迫感を伴って通路の両側に在った。
その窓は墨で塗ったかのように真っ黒で、虚無が口を開けているというよりもむしろ画用紙に色を付けたように何の立体感も無かった。
歩く地面はやはりスクリーンのような滑らかさを持った一枚板で、土とアスファルトと草とがコンピュータ・グラフィックスのようにのっぺらとした質感を放っている。
52: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/06/07(木) 01:18:29.43 ID:gQCy6oSp0
ふつう魔法少女は、遠隔の仲間たちとの意思疎通手段としてテレパシーを用いる。
この場合で言うテレパシーというのは、先ず伝えたいと思った思念をキュウべえが拾い上げ対象へと送り届ける、キュウべえを必ず介する遠隔意思機構だ。
それは言うなればサーバーを介したメールの送受信のようなもので、その内容は他者に、そして何よりもサーバー役のキュウべえには筒抜けとなってしまう。
美国織莉子と呉キリカはそれを疎んじた。
110Res/177.89 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。