過去ログ - 織莉子「私の世界を守るために」
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51: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/06/07(木) 01:17:39.22 ID:gQCy6oSp0
 結界内部は荒涼としていた。
スクリーンのような滑らかさを持ったビルディングがいくつもそびえ、それらは胸を締めるような圧迫感を伴って通路の両側に在った。
その窓は墨で塗ったかのように真っ黒で、虚無が口を開けているというよりもむしろ画用紙に色を付けたように何の立体感も無かった。
歩く地面はやはりスクリーンのような滑らかさを持った一枚板で、土とアスファルトと草とがコンピュータ・グラフィックスのようにのっぺらとした質感を放っている。

以下略



52: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/06/07(木) 01:18:29.43 ID:gQCy6oSp0
 ふつう魔法少女は、遠隔の仲間たちとの意思疎通手段としてテレパシーを用いる。
この場合で言うテレパシーというのは、先ず伝えたいと思った思念をキュウべえが拾い上げ対象へと送り届ける、キュウべえを必ず介する遠隔意思機構だ。
それは言うなればサーバーを介したメールの送受信のようなもので、その内容は他者に、そして何よりもサーバー役のキュウべえには筒抜けとなってしまう。

 美国織莉子と呉キリカはそれを疎んじた。
以下略



53: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/06/07(木) 01:19:18.25 ID:gQCy6oSp0
***

 キリカの爪が扉を斬り飛ばすと、その先は先ほどまでの市街地とは打って変わったコロッセオのようなドーム状空間だった。
住居を砲撃して吹き飛ばした跡のような石壁がそこかしこに点在していて、まるで墓標のように地に暗い影を落としている。

以下略



54: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/06/07(木) 01:19:50.40 ID:gQCy6oSp0
 ふ、と織莉子の笑う声が聞こえた気がした。

(そうね、"私"では到底無理な相手でしょう。
 私はキャパシティが特殊能力に偏ってしまっているせいで、お世辞にも高い攻撃能力を持っているとは言えないわ。
 キリカも特殊能力に重きを置いているタイプで、やはり火力は高くない)
以下略



55: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/06/07(木) 01:20:44.31 ID:gQCy6oSp0
(私の武器は――結界の初めの方でも見せたように水晶球よ。
 けれど私は、私固有の能力の副次的な産物として、ある程度の強度を持った魔力糸をも操ることが出来る。
 頭からもこもこと糸が生えるだなんて少しみっともないのだけれど、生きるか死ぬかの戦いにそんなことは言っていられないものね)

 秘密の隠し事を開陳する幼子のようにはにかんだ口調で、織莉子は語る。
以下略



56: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/06/07(木) 01:21:44.13 ID:gQCy6oSp0
 結界が崩れ去る。
織莉子が話を終えて数秒後のことだった。
キリカの、本来は3つの爪は一枚に畳まれ二回りほど大きなブレードと化し、魔女だか魔男だか分からない風貌のそれを唐竹割にした。

 刹那、世界はぐにゃりと歪む。
以下略



57: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/06/07(木) 01:22:24.11 ID:gQCy6oSp0
「貴女も感じているでしょうけれど、私、学校ではあまり立場が良くないの。
 そこでお願いなのだけれど、巴さんには、学校で私との接触を出来る限り絶ってもらいたいの。
 もちろん、テレパシーには応じるしメールだって大丈夫だけれど、直接話すのは遠慮して頂きたいわ」

「私は――」
以下略



58: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/06/07(木) 01:23:23.60 ID:gQCy6oSp0
***

 夜、雲は少なく、星々は瞬きを繰り返し二人のことを眺めている。
白い丸テーブルの上にはランプの火が揺らめいていて、それに従ってキリカの瞳がちらちらと小さな反射を返す。
織莉子は丁度良い按配になった湯をティーポットに注ぐと、少しだけ蒸らし、二人分のカップへと注いだ。
以下略



59: ◆qaCCdKXLNw[saga]
2012/06/07(木) 01:24:45.14 ID:gQCy6oSp0
以上、第2話後半でした。
織莉子「彼女だけは許せない、絶対に」

なぜこれほどまでに織莉子がマミさん憎んでいるかと言うと……それは次回。


60:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/06/07(木) 02:18:15.15 ID:k6ufifwGo

マミさんがボロ雑巾化してしまうな…


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