854:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:06:27.47 ID:5zJPOgVlo
「あの子なんて、放っておいたって害はないですよ。どうせ口先だけで、何もできやしないんです。そういう子です。よく分かります」
「……どうして?」
855:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:07:03.40 ID:5zJPOgVlo
ともだちの相談をうまく使って、もういちど距離を縮められないかとか、なんとかして近づけないかとか。
そんなことばかりずっと考えてたんです。
どうせきみはわたしのことなんて好きにならないって分かってたのに、それでも諦めきれなくて、未練がましくつきまとってたんです。
856:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:07:58.87 ID:5zJPOgVlo
「でも、これでおしまいです」
と彼女は言った。影をひそめていた恐れが、俺の心を支配する。
857:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:08:31.13 ID:5zJPOgVlo
ふと、頬にふれた雪の冷たさに、はっとした。
気付けばあたりは暗くなっている。夜が来た。もうそんなにも時間が経っていたのだ。
どうしよう、と俺は考える。
858:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:08:57.48 ID:5zJPOgVlo
家の扉には鍵がかかっていた。持ち歩いていた鍵をつかって扉を開ける。
玄関に妹の靴はない。出かけているのだと俺は思った。
リビングのテーブルの上に書置きがある。
859:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:09:51.25 ID:5zJPOgVlo
彼女は俺を好きになったりしないだろう。こんな馬鹿でマヌケでゴミみたいな人間を。
どうしようもなく逃げてばかりの人間を。
そのことを期待するのは愚かだ。だから口を噤んでいた。
860:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:10:19.15 ID:5zJPOgVlo
階段を昇って自室に戻る。ベッドに体を投げ出す。身体が熱い。それとも空気が冷たいのか。
俺は枕に顔を押し付ける。枕は俺の友だちだ。何も考えないようにしてくれる。
そして俺はばかばかしいような気持ちになった。枕はものだ。
861:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:10:46.19 ID:5zJPOgVlo
――不意に、部屋の空気が切り替わった気がした。
怪訝に思う。何が起こったのだろう。突然、さっきまでとはまったく違う空気になった。
静寂に耳鳴りが起こる。予兆のような気配。
862:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/05(木) 17:11:24.96 ID:5zJPOgVlo
つづく
863:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/07/05(木) 17:37:15.65 ID:QPu7bWJ4o
乙
盛り上がってきてるー
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