過去ログ - 女「ちょwww私の脊髄とるのwwwwwやめwwww痛いwwww」
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24:『コペイン』 ◆k6VgDYkyGI[saga]
2012/08/19(日) 02:26:33.46 ID:+rsVUWK9o
けたたましく喚《わめ》く四〇代の中肉中背のコメディアンが描く不気味な線形の記号を正確に
模写しつつ、ぼくは目立たないように教室の一点に視線を運ぶ。

縦三列横三列目、三十五席ある机群のほぼ中心にある机の上に、
くすんだ白藍《しらあい》の空《から》の花瓶がぽつんと置かれている。
以下略



25:『コペイン』 ◆k6VgDYkyGI[saga]
2012/08/19(日) 02:27:03.60 ID:+rsVUWK9o
ぼくの眼球が定点観測カメラと同じく一点に固定されたまま二千倍速で信号を脳に入力している。
動く物体の残像が重なり合って流体のような形状を取っているそんな光景の中で
唯一静かに佇んでいるのは、数ヶ月前に献げられた香花《こうばな》の勿忘草《わすれなぐさ》が
誰も水を替えなかったために腐ってゴミ箱に捨てられ、代わりに虚《うつろ》が生けられている
彼女の机の上の花瓶だけ。
以下略



26:『コペイン』 ◆k6VgDYkyGI[saga]
2012/08/19(日) 02:28:36.08 ID:+rsVUWK9o
全ての障害物を排除する頃には肩で息をしているが、ぼくはそれでもすぐに彼女の席に戻り、
椅子の背もたれを支える鉄筒を両手でがっしりと握り締めがちゃがちゃと
鉄製の蔦《つた》のように絡み付く机から引き剥がすと頭の上に高く掲げながら、
ふらふら覚束ない足取りで大窓に近づいてゆく。

以下略



27:『コペイン』 ◆k6VgDYkyGI[saga]
2012/08/19(日) 02:30:06.23 ID:+rsVUWK9o
ぼくは一瞬だけ木目が縦横に走る教室の床の下の、そのずっと下にある無限の暗黒と虚無に思いを
馳せる。誰もその生に関心を持たず誰もその死を関心を持たない、
汚物で汚れたワンピースを着込んだ少女が体育座りをしているそのすぐ横に、
世間の耳目を一身に集める死体の軸椎が置かれている。

以下略



28:『コペイン』 ◆k6VgDYkyGI[saga]
2012/08/19(日) 02:31:24.57 ID:+rsVUWK9o
だから彼女は絶対に選んだ筈だ。生きている内に許されなかった女性を表象する服を着ることを、
そして、それを以て彼女の親への、同級生への、この世界への反意を、
タオルで気道を半ば塞ぎながら叫ぶことを。

無間《むげん》の闇にある彼女は体育座りをしたまま何も言わずそっとC2を手に取り、
以下略



29:『コペイン』 ◆k6VgDYkyGI[saga]
2012/08/19(日) 02:32:00.60 ID:+rsVUWK9o
 -X-


今夜も蝋色の景色は既視感をそのまま描いた黒地のカンバス、古びた映写機のスプロケットに回され
映写幕に投影されるただひとつの傷だらけのフィルムで、ぼくの両目は暗闇の中、河の周囲に密生した
以下略



30:『コペイン』 ◆k6VgDYkyGI[saga]
2012/08/19(日) 02:32:33.55 ID:+rsVUWK9o
電灯から立ちこむ薄霧のような仄かな明りの中、彼女は背筋をぴんと張ったまま、
頼りなげな蛍光を切り裂いて歩みを進めている。一度も止まったことの無いすらりとした二本の脚、
今まで躓いたことの無いしっかりとした二本の足は活力に満ちていて、
一歩毎に生の充満した匂いを発散している。

以下略



31:『コペイン』 ◆k6VgDYkyGI[saga]
2012/08/19(日) 02:33:48.31 ID:+rsVUWK9o
あなた、どうしたの。

坂を転げ落ちたんだ。

大丈夫?
以下略



32:『コペイン』 ◆k6VgDYkyGI[saga]
2012/08/19(日) 02:34:16.17 ID:+rsVUWK9o
私と同じ高校でしょ、その制服。

そうなの?

同じだよ。
以下略



33:『コペイン』 ◆k6VgDYkyGI[saga]
2012/08/19(日) 02:35:03.67 ID:+rsVUWK9o
 -Y-


ぼくは無言で皐月躑躅《さつきつつじ》の盆栽をする。

以下略



34:『コペイン』 ◆k6VgDYkyGI[saga]
2012/08/19(日) 02:36:07.22 ID:+rsVUWK9o
針金が熱で微かに変色するのを確認するとぼくは台所に向かう。金属製の水切りバスケットから
コップを取り上げ、水道の蛇口を捻りコップに生温い水を注いで、それを持ち上げて喉に注ぐと
ぼくの食道が蠕動《ぜんどう》する。

そのままコップを流しに放り投げて、ぼくは冷蔵庫へ向かう。
以下略



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