61:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 19:31:11.38 ID:bOaug2Ec0
  
  
 十、ジョバンニの切符 
  
  
62:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 19:34:24.93 ID:bOaug2Ec0
  
 男「屋根の上のは、白鳥座のくちばしの辺りにあるアルビレオって名前の二重星だ。 
   望遠鏡を通さないで見るときに、 
 風が吹くとちろちろまたたいて、くっついたり離れたりしてるように見えるんだよ。」 
  
63:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 19:36:06.58 ID:bOaug2Ec0
  
 車掌が手を出しているもんだから何でも構わない、やっちまえと思って渡したら、車掌はまっすぐに立ち直って丁寧にそれを開いて見ていた。 
  
 そして読みながら上着のぼたんやなんかしきりに直したりしたし燈台看守も下からそれを熱心にのぞいていましたから、男はたしかにあれは証明書か何かだったと考えて少し胸が熱くなるような気がした。 
  
64:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 19:39:12.55 ID:bOaug2Ec0
  
 女は、その紙切れが何だったか待ち兼ねたというように急いでのぞきこんだ。 
 男も全く早く見たかったのだ。 
  
 ところがそれはいちめん黒い唐草のような模様の中に、おかしな十ばかりの字を印刷したもので、 
65:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 19:42:01.76 ID:bOaug2Ec0
  
 そしてきまりが悪いので女と二人、また窓の外をながめていたが、 
 その鳥捕りの時々大したもんだというようにちらちらこっちを見ているのがぼんやりわかった。 
  
 女「もうじき鷲座に着くよ。」 
66:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 19:44:11.20 ID:bOaug2Ec0
  
  
 女「あの人のこと、何か覚えてない?」 
  
 女がずっと我慢していたように聞いた。 
67:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 19:47:29.14 ID:bOaug2Ec0
  
 女「なんだか苹果(りんご)の匂いがする。いま甘いもの食べたいなーって思ったからかな。」 
  
 女が不思議そうにあたりを見まわした。 
  
68:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 19:50:01.73 ID:bOaug2Ec0
  
  
 「あら、ここどこでしょう。まあ、きれいだわ。」 
  
 青年のうしろにもひとり、十二ばかりの眼の茶いろな可愛らしい女の子が、 
69:この章に入ってからがまた長いんだよな・・・ ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 19:52:54.06 ID:bOaug2Ec0
  
 「お父さんやきくよねえさんはまだいろいろお仕事があるのです。 
 けれどももうすぐあとからいらっしゃいます。 
 それよりも、おっかさんはどんなに永く待っていらっしゃったでしょう。 
 わたしの大事なタダシはいまどんな歌をうたっているだろう、 
70:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 20:00:28.43 ID:bOaug2Ec0
  
 「あなた方はどちらからいらっしゃったのですか。どうなすったのですか。」 
 	 
 さっきの燈台看守がやっと少しわかったように青年にたずねた。 
 青年はかすかにわらった。 
71:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 20:05:35.93 ID:bOaug2Ec0
  
  
 www.youtube.com 
  
 賛美歌320番 主よみもとに近づかん 
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