過去ログ - 見習い魔法使いのいつもと違う一日
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2012/11/09(金) 20:58:28.58 ID:iX4/EhmQo
  
  ルークはベッドに寝かせられていた。 
  顔は痣だらけで、擦り傷もいっぱい。 
  ゴホッと吐いた咳には血が混じっているようだ。 
  
53:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/09(金) 20:58:55.65 ID:iX4/EhmQo
  
 「心当たりでもあるのかい?」 
  師匠がいつも通りの眠そうな目でリリーの方に視線をよこす。 
  リリーは少し迷った後、今日のことを説明した。 
 「……実は」 
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2012/11/09(金) 20:59:22.59 ID:iX4/EhmQo
  
  俯くリリーの頭を師匠がぽんぽんと撫でた。 
 「でもまあ結局のところそんなことはどうでもいい。とにかく手を尽くすよ」 
 「……お願いします」 
  
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2012/11/09(金) 20:59:49.45 ID:iX4/EhmQo
  
  月が青白い光を地に投げかける。 
  家々が夜の闇に静まる。 
  
  ルークの両親は魔法使いの自分たちを避けて別の所にいる。 
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2012/11/09(金) 21:00:15.84 ID:iX4/EhmQo
  
  屋敷につくと書庫に向かった。 
  扉を開けて端から探っていく。 
  どこかにある。あれは、あるはずなのだ。 
  
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2012/11/09(金) 21:01:12.43 ID:iX4/EhmQo
  
  ルークの部屋に戻ると、火の入った暖炉の前の椅子に、師匠が座っていた。 
  治療はひと段落したらしい。本を抱えたまま息を切らしているリリーを見て、「やあ」と手を上げた。 
 「お帰り」 
  
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2012/11/09(金) 21:01:38.78 ID:iX4/EhmQo
  
  リリーはすぐには答えられなかったけれど、言葉を選んでゆっくりとかみしめるように言った。 
 「ルークが、死んじゃったら、生き返らせるんです」 
  師匠はそれを聞いても動じる様子はなかった。 
 「確かにこの子はだいぶ危ない状態だね」 
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2012/11/09(金) 21:02:31.10 ID:iX4/EhmQo
  
 「え?」 
  急に言われたのですぐには理解できなかった。 
  ゆっくりとその意味が頭にしみとおっていくのを、もう一人の自分が遠くから見ているような気がした。 
  
60:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/09(金) 21:03:27.57 ID:iX4/EhmQo
  
 「そんな」 
 「おまけにね。持っていかれたよ」 
  死者の蘇生にかかる代償。リリーはそれを思い出す。 
 「感情と姉と過ごした記憶をだ」 
61:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/09(金) 21:04:32.00 ID:iX4/EhmQo
  
  リリーは、しばらく何も言えずに師匠の横顔を眺めていた。 
  それからふと思いついて口にする。 
 「失敗して、感情をなくしても。それでも生き返らせたい人だったんですね……」 
  感情をなくしてどんなことにも意味を見いだせなくなって。それでも師匠は姉に会いたかったのだろう。 
62:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/09(金) 21:04:58.42 ID:iX4/EhmQo
  
  師匠はリリーから小瓶を受け取るとルークの寝るベッドに近付いた。 
  リリーはそれを見ながら考えていた。 
  ルークが起きたら、まずなにを言おうかな。 
  
63:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/09(金) 21:05:31.04 ID:iX4/EhmQo
  
  鳥のさえずりが聞こえた。 
  窓からは朝日が差し込んでいる。 
  寝起きのリリーは、椅子にもたれたままぼんやりとそれを眺めていた。 
  
64:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/09(金) 21:06:31.82 ID:iX4/EhmQo
  
 …… 
  
 「それでよ」 
  あれから数日。怪我がだいぶ良くなって外に出られるようになったルークがリリーに問いかける。 
65:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/09(金) 21:07:04.79 ID:iX4/EhmQo
  
 「……そうか」 
  ルークは言って、空を見上げた。 
  まだ身体のあちこちに包帯が残っているし、本当は出歩くのは禁止されているのだけれど、無理して出てきた様子だ。 
  
66:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/09(金) 21:07:48.80 ID:iX4/EhmQo
  
  もう過ぎたことと割り切れたと思ったけれど。 
  不意に涙がこぼれそうな気分になって、リリーは慌てて目をこすった。 
  ルークは気づかないふりをしてくれたようだった。 
  
67:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/09(金) 21:08:31.20 ID:iX4/EhmQo
  
  箱を開けると同時に鳴き声がした。 
  中にいたのは。 
 「子猫?」 
  
68:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/11/09(金) 21:09:08.28 ID:iX4/EhmQo
 おしまい 
69:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県)[sage]
2012/11/09(金) 21:09:52.28 ID:34fyME/3o
 おつ 
 面白かった 
70:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/11/09(金) 21:10:02.85 ID:iX4/EhmQo
 読んでくれてありがとです 
 お付き合いどうもでした 
71:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage]
2012/11/09(金) 22:09:48.04 ID:3nwyPmuAO
 乙 
 良かったよ 
72:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)[sage]
2012/11/11(日) 09:26:55.57 ID:NyYUomDko
 よかった 
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