1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/16(水) 23:21:48.77 ID:Z2MY10hv0
ひだまり荘の外では、まだ雪が降っているみたいだった。
わたしは乃莉ちゃんの部屋のカーテンを少しだけ開けて、ひだまり荘のお庭を眺める。昼間からとどまることを知らずに降り続けた雪は、ゆの先輩の脚を半分くらいは隠せそうなほど、積もっていた。
音絶えし、この音が雪、降る音か――だったかな。うろ覚えだけど、たしか、そんな俳句があったような気がする。なるほど。実際そういう場面に直面してみると言い得て妙で、雪と一緒に静寂の微粒子も積もっているような感覚を、わたしは覚えた。
乃莉「なずなー、お風呂空いたよ〜」
脱衣所から乃莉ちゃんの声が聞こえてきたので、わたしはカーテンから手を離す。支えを失ったそれは、重力に引っ張られるがままにはらりと揺れて、頼りなくぶら下がった。
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2013/01/16(水) 23:23:06.44 ID:Z2MY10hv0
乃莉「すぐに入れるよ。今日はラベンダーの入浴剤」
バスタオル姿で居間まで歩いてきた乃莉ちゃんは、わたしに声をかけた。微妙に刺激的な格好をした乃莉ちゃんを直視できず、
なずな「うん、今入るね」
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2013/01/16(水) 23:25:56.05 ID:2Foiu2fto
ちなあ…いや支援
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2013/01/16(水) 23:28:13.06 ID:Z2MY10hv0
月に数回、わたしたちは互いの部屋でお泊まりをする。それは試験までの日数に比例して多くなったり、個別の課題が忙しくなるにつれて少なくなったりするのだけれど、だいたいは月三回くらい。
そういうことを始めてから、もう半年以上も経っているので、わたしはすでに、乃莉ちゃんの部屋の些細な変化にも気づくようになっていた。
なずな「あ……乃莉ちゃん、シャンプー変えたんだ」
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2013/01/16(水) 23:30:21.98 ID:Z2MY10hv0
お風呂場は、ラベンダー特有の、どこか落ち着くような香りが漂っていた。湯船の中は、たしかに紫色だ。
ラベンダーというと、わたしは『時をかける少女』を思い出す。アニメのバージョンも好きだけど、そっちではなくて、筒井康隆の原作の方だ。
昔から引っ込み思案のわたしは、そういう空想小説みたいなものを、よく読んで過ごしていた。小説の世界に思いを馳せているあいだは、少しだけそっちの世界の住人に近づけるような気がしていたから。
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/16(水) 23:32:07.32 ID:Z2MY10hv0
乃莉ちゃんはコンピューターをいじっているところだった。
画面に向かってニコニコしてる。マイク付きのヘッドフォンを付けているから、地元の友達としゃべっているのかな。
なずな「お風呂、出たよ〜……」
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2013/01/16(水) 23:34:52.08 ID:Z2MY10hv0
やがて電話を終えた乃莉ちゃんが、ヘッドフォンをおき、回転椅子を回してこちらを向く。むこうとしては『いつの間にか座っていた』のだろうわたしを目にとめて、
乃莉「なずな〜、出たんならそう言ってよ〜」
言ったんだけどな。
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/16(水) 23:36:18.36 ID:Z2MY10hv0
それからしばらく、二人で他愛のない会話を続けた。学年共通課題が難しいね、とか、明日の天気は晴れるといいね、とか。
そういえば、大雪の影響で電車が止まっているらしい。徒歩通学のわたしたちは大丈夫だったけど、電車通学の生徒は大変な思いをしているのだろう。このまえクリスマスパーティーに来た夏目先輩はちゃんと帰れたのかな。わたしは他人事のように心配した。
乃莉「そろそろ寝よっか」
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2013/01/16(水) 23:38:16.36 ID:Z2MY10hv0
乃莉「今日はなずながそっちね」
乃莉ちゃんは壁際に寄ったので、わたしは淵の方で寝ることになった。初めの頃は少し窮屈に思ったものだけれど、最近はそうも感じない。
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