297:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/08(月) 23:45:37.52 ID:4z1h5cCXo
『確かに奈緒ちゃんはおまえと血が繋がっていないけど、それでもずっと奈緒人と一緒に
過ごしてきたんだぞ。どうしてそんな冷たい仕打ちができるんだ』
お父さんが混乱した表情で兄貴に言った。お母さんは俯いて涙を拭いているだけだ。
298:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/08(月) 23:46:13.62 ID:4z1h5cCXo
「あんたのお姉さんってさ、ちょっと心が広すぎなんじゃないの」
あたしはある日、玲子ちゃんに呼び出されたカフェで向かいに座った彼女に言った。
299:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/08(月) 23:47:11.26 ID:4z1h5cCXo
その日、兄貴は今日は徹夜で校正があるので帰れないと連絡してきた。兄貴と絶縁して
いたあたしたちだったけど、兄貴と二人の子どもたちがあたしたちの家から姿を消すまで
は家族としての責任を果たすつもりだったから、あたしは事務的に冷たい声で兄貴の電話
を受けた。今までなら兄貴に対して優しい声でねぎらいの言葉の一つもかけていただろう
300:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/08(月) 23:49:56.10 ID:4z1h5cCXo
後になって両親から聞いたのだけど、兄貴は翌日の夜奈緒人と奈緒に今後彼らがどうな
るのかを話したらしい。あたしが夕食の支度をしている隙を見てそうしたのだ。二人は兄
貴の隙をついて家出した。二人はすぐに警察に保護されたのだけど、迎えに行った兄貴と
一緒に帰って来たのは虚ろな目をした奈緒人だけだった。結局あたしは奈緒に最後のお別
301:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/08(月) 23:55:14.07 ID:4z1h5cCXo
やがてあたしは同期入社の人たちや指導してくれるメンターからやる気のない駄目社員
の烙印を押されるようになった。そのままやる気や意義を見出せないまま研修期間が終了
し、あたしは法務部の訟務課というところに配属になった。ここは取り引きに関わるトラ
ブルに起因する訴訟や社の知的財産所有権に関わる訴訟への対応を行うセクションだった。
302:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/08(月) 23:56:14.83 ID:4z1h5cCXo
主任はあたしが配属されている知的財産所有権グループの課員の日程を眺めた。ここで
ようやくこれまでのん気そうだった主任が難しい声で言った。
「まずいな。みんな予定が入ってる」
303:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/08(月) 23:57:05.66 ID:4z1h5cCXo
名刺を差し出そうとした太田先生の手が止まった。
「あれ。あなた、どこかでお会いしていましたっけ」
304:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/07/08(月) 23:57:37.01 ID:4z1h5cCXo
今日は以上です
305:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/07/09(火) 00:49:40.20 ID:p1+tJOEBo
乙
306:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/16(火) 22:39:18.50 ID:AhPKC+s4o
その仕事は半年ほどで相手方の会社とパテントについて折り合いがつき決着した。あた
しは初めての仕事を無事に終えたのだ。そしてこのタイミングで形式的な試用期間が終了
する。あたしは正式採用になる前に社を去ることに決めた。
307:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/16(火) 22:44:43.96 ID:AhPKC+s4o
「まあ、そんなことはいいや。で、結城は何で辞めたいの? 就活してたときからうちが
第一志望だったんだろ? それともそれは面接のときのリップサービスか」
係長がようやく本題に入った。
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