48:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 23:08:17.63 ID:y8XKonFyo
どす、とすん、と二つ音がした。
一つは首を抱えたままの体が倒れる音。
もう一つは女の首が床に落ちた音である。そのどちらからも大量の血潮がほとばしり、床を汚していく。
49:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 23:09:17.43 ID:y8XKonFyo
場違いなほど落ち着いた声が、すぐ傍でする。
先輩アイドルたちののんきなやりとりに、蘭子はあっけにとられていた。
「しかたないか」
「しかたないね」
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2013/03/03(日) 23:10:45.36 ID:y8XKonFyo
そうしてすら、二人の挑戦の叫びは彼女の頭をぐらぐらと揺らし、体そのものを震わせた。
なによりも空気を、そして、スタジオ全体をそれは揺り動かしていた。
蘭子自身はうかがい知れぬことであるが、その時点で生きていた人間は、その全てが吠え声で失神している。
51:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 23:11:56.64 ID:y8XKonFyo
もちろん、響たちにそれにつきあう義理はない。
彼女たちは、即座に行動に移った。
白銀の狼が男に向けて突進する。
52:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 23:12:48.42 ID:y8XKonFyo
ぽすん、と蘭子の体が床に落ちる。
完全に腰が抜けてしまっていた。
意識のほうも、だいぶ飛んでしまっている。
53:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 23:13:43.12 ID:y8XKonFyo
心配げにしていた響と美希は思わず顔を見あわせ、そして、穏やかな、しかし、どこか寂しそうな笑みを浮かべた。
「私、響さんたちが、ええっと……その、し、知らなくて!」
蘭子は胸につかえている言葉たちをなんとかしてはき出そうとわたわたしている。
54:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 23:14:49.50 ID:y8XKonFyo
神崎蘭子は、素直な少女である。
想念の世界を楽しむのも、アイドルとしての自分を楽しむのも、実に素直に受け入れている。
彼女は自らを見出した人物――所属プロダクションのプロデューサー――と過ごした時間を大切にしている。
55:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 23:15:55.48 ID:y8XKonFyo
「頂点を極めし者に、正当なる賛歌を」
「だから、トップアイドルなんてもう昔のことで……」
律子は困ったようにそう言うが、彼女は実際、引退しているわけではない。
56:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 23:16:23.46 ID:y8XKonFyo
「すいません。では、三浦単独のほうを先にしていただいて……。ええ、春香は私が連れていきますから」
あえて周囲に通る声で結論を述べ、春香に肩を貸す律子。
「ほら、春香。ゆっくりでいいから」
57:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/03(日) 23:17:19.94 ID:y8XKonFyo
しばらくあずさの撮影を眺めていた蘭子であるが、その間も彼女はずっとそわそわしていた。
自分になにができるというわけでもないが、春香の様子が心配でならなかったのだ。
結局、彼女は立ち上がり、スタジオを静かに抜け出る。
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