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2013/03/12(火) 20:43:42.62 ID:fz9LGbgw0
話を戻すけれど、猫そのものになった私は、まさに気分のままに社交会を出た。
パパはいつまでも話の途中だったし、使用人もせわしなく働いていた。
そこまでずっと猫をかぶって『水瀬財閥のいい娘』を演じてきた私を心配するものはいなかった。
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2013/03/12(火) 20:45:26.33 ID:fz9LGbgw0
そして店員さんがやってきた。歳をとっているけれど、笑顔のきれいな品のあるおばあさんだった。
ちょっとふっくらしていて、着ている花がらのエプロンは、とってもよく似合っていた。
『ご注文は、お決まりですか』
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2013/03/12(火) 20:46:26.82 ID:fz9LGbgw0
『お待たせいたしました、サンドイッチと、オレンジジュースです』
差し出されたサンドイッチには、本来の量ではないだろう具がたっぷりとつまっていた。
おばあさんは大きなくりくりとした目を少しだけ細めて、こう言った。
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2013/03/12(火) 20:47:39.94 ID:fz9LGbgw0
『ねえ、お嬢さん。お嬢さんは、どこから来たの』
『ああ…ごめんなさい。とっても綺麗なお洋服を着ているから、つい、気になって』
きっと内心では心配して言ってくださったのでしょう。こんな夜に。
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2013/03/12(火) 20:48:23.01 ID:fz9LGbgw0
目を奪われていた事に気付いた。
たくさんの人の前で歌って、人を笑顔にして、人々に支持されて。
自分の存在を…認められて、いたのだから。
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2013/03/12(火) 20:49:01.48 ID:fz9LGbgw0
喫茶店のドアベルが鳴る。お嬢様、お嬢様。そう呼ぶ使用人の声が響く。
帰りましょう、旦那様がお待ちです。旦那様が、旦那様が。
お帰りにならないのであれば、多少強引にでも、と。黒服はそう言った。
その中に新堂は含まれていなかった。当たり前だけれど、少し寂しかった。
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2013/03/12(火) 20:49:29.71 ID:fz9LGbgw0
その後の事はよく覚えていないの。
家に帰ったら、今までにないくらい、優しく迎え入れられた。
奥の広間に通じる手前の廊下を通って、自分の部屋に戻るように使用人に促された。
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2013/03/12(火) 20:49:57.16 ID:fz9LGbgw0
ベッドに横になり、今日の事を思い出した。
勝手に社交会を抜けだしたこと、街に出て、たくさんの輝きを知ったこと。
おばあさんと出会って、自分の答えを見つけたこと。
とっても甘酸っぱい、オレンジジュースを飲んだこと。
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/03/12(火) 20:50:39.96 ID:fz9LGbgw0
アイドルに目を奪われて、羨んで、憧れて。
私はアイドルになって、自分を認めさせることに決めた。
アイドルになるためにはどうすればいいのか。
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2013/03/12(火) 20:52:19.87 ID:fz9LGbgw0
まだ、シェフはいるようだった。
食器や調味料、食材のしたごしらえなどをしていたらしい。
私に気付いて、声をかけてきた。
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