過去ログ - 伊織「さようなら」
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7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/03/12(火) 20:39:44.28 ID:fz9LGbgw0

親っていうのは、子供が出来たら嬉しいものなのよ。
中にはいい顔をしない人も居る…けれど、私の所は違った。
私が生まれて、ある程度物心がついた時点から…私は光で眩しい社交会へと足を踏み入れていたらしい。

以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/03/12(火) 20:40:33.70 ID:fz9LGbgw0

歳を重ねるごとに増える社交界。そのときもまだお兄さまの立場への足がかりすら見えなかった。
そして、また繰り返すの。『はい、もちろん、覚えています』

私のしていることは、機械とやっていることと代わりはなかった。
以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/03/12(火) 20:41:05.44 ID:fz9LGbgw0

私の家では、あまり娯楽があるわけではなかった。
私の娯楽…つまり、楽しみは…買い物をするくらいだったかしら。
欲しいと言えば買ってもらえたし、買ってこさせた。
でも、小さな私が思いつく欲しいものは、すぐに尽きた。
以下略



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/03/12(火) 20:43:42.62 ID:fz9LGbgw0

話を戻すけれど、猫そのものになった私は、まさに気分のままに社交会を出た。
パパはいつまでも話の途中だったし、使用人もせわしなく働いていた。
そこまでずっと猫をかぶって『水瀬財閥のいい娘』を演じてきた私を心配するものはいなかった。

以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/03/12(火) 20:45:26.33 ID:fz9LGbgw0

そして店員さんがやってきた。歳をとっているけれど、笑顔のきれいな品のあるおばあさんだった。
ちょっとふっくらしていて、着ている花がらのエプロンは、とってもよく似合っていた。

『ご注文は、お決まりですか』
以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/03/12(火) 20:46:26.82 ID:fz9LGbgw0

『お待たせいたしました、サンドイッチと、オレンジジュースです』
差し出されたサンドイッチには、本来の量ではないだろう具がたっぷりとつまっていた。
おばあさんは大きなくりくりとした目を少しだけ細めて、こう言った。

以下略



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/03/12(火) 20:47:39.94 ID:fz9LGbgw0

『ねえ、お嬢さん。お嬢さんは、どこから来たの』
『ああ…ごめんなさい。とっても綺麗なお洋服を着ているから、つい、気になって』

きっと内心では心配して言ってくださったのでしょう。こんな夜に。
以下略



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/03/12(火) 20:48:23.01 ID:fz9LGbgw0

目を奪われていた事に気付いた。
たくさんの人の前で歌って、人を笑顔にして、人々に支持されて。
自分の存在を…認められて、いたのだから。

以下略



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/03/12(火) 20:49:01.48 ID:fz9LGbgw0

喫茶店のドアベルが鳴る。お嬢様、お嬢様。そう呼ぶ使用人の声が響く。
帰りましょう、旦那様がお待ちです。旦那様が、旦那様が。
お帰りにならないのであれば、多少強引にでも、と。黒服はそう言った。
その中に新堂は含まれていなかった。当たり前だけれど、少し寂しかった。
以下略



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/03/12(火) 20:49:29.71 ID:fz9LGbgw0

その後の事はよく覚えていないの。
家に帰ったら、今までにないくらい、優しく迎え入れられた。
奥の広間に通じる手前の廊下を通って、自分の部屋に戻るように使用人に促された。

以下略



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