過去ログ - 大学教授「私がアイドルのプロデューサーだと」
1- 20
1: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/03/31(日) 11:46:06.15 ID:KMurB9r40
今日中に終わる

SSWiki : ss.vip2ch.com



2: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/03/31(日) 11:48:47.10 ID:KMurB9r40
そうだ、と高木は頷くと

「実は、あと2、3年したら今の会社を出て独立しようと思っていてね。しばらくは今の会社のお世話になろうと思っているが、いつかは自立して芸能プロダクションを創りたいと思っているんだ」

高木はそういうと左手をカップに伸ばしてコーヒーを啜った。かつてはブラックを愛飲していた彼だが、今日は砂糖とクリームをたっぷりと加えていたことを思い出した。


3: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/03/31(日) 11:50:51.27 ID:KMurB9r40
「独立というからには、今の会社からまるまる人材を引っ張ってくるのではなく、私の会社で独自に人材をスカウトしてプロダクションを回したいと思っているのだよ。
そのためには事務員もいるだろうし、マネージャーもいるだろう。そして何よりもプロデューサーが必要だ」

そういうと彼はゆっくりとスプーンをとってコーヒーを混ぜた。


4: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/03/31(日) 11:55:05.99 ID:KMurB9r40
「君が芸能プロダクションのプロデューサーだということは知っているよ。君が新しくプロダクションを設立しようというのなら、私も応援しよう。しかし、私がプロデューサーというのはどういう事かね。それに、アイドルとは」
注文したエスプレッソが運ばれて間もなくの高木の言葉に私は面食らったが、それだけ言うとブラックのままカップに口をつけた。
「いや、少し驚いてね。君が突拍子もないことを言うのはいつもの事だが、私がアイドルのプロデューサーとは君の冗談にしてはおもしろいじゃないか」


5: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/03/31(日) 11:58:54.05 ID:KMurB9r40
高木はスプーンを回す手を止めて

「今の会社は、業界では中堅のプロダクションでね。私も最初は歌手としてプロダクションのお世話になったが、全く売れなくてね。
当時の社長の勧めで、マネージャーやプロデューサーとして俳優や歌手をサポートする仕事をさせてもらったのだが、ある時一人のアイドルのプロデューサーを任せられてね」

以下略



6: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/03/31(日) 12:00:56.23 ID:KMurB9r40
高木とは長い付き合いだが、お互いに仕事の話をすることはほとんどなかったように思う。
そもそも高校からの付き合いだが、私が大学に進んでからは会う機会も滅法減り、今日顔を会わすのもおよそ10年振りという具合である。
彼との交友が今でも続いているのは互いの波長が合っているからなのか。

「済まないが、知らないね。私が芸能界に疎いのは君も承知だろう」


7: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/03/31(日) 12:05:12.51 ID:KMurB9r40
そう言うと彼は少し口角をあげて

「そうだったね。いや、失礼した。ところでその小鳥君だがね、彼女はそれまで私がロデュースした誰よりも素晴らしい才能を持っていたのだよ。俳優なんて目じゃない、溢れ出る輝きとでも言おうか、そういう才気がある子だった」

そこで彼は突然大きな声をあげて笑い始めた。
以下略



8: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/03/31(日) 12:08:03.42 ID:KMurB9r40
「済まない。どうも気恥ずかしくてね。それで私は彼女のプロデュースをすることになったのだが、何分、私もアイドルのプロデュースというのは慣れないことだったし、ましてや相手は中学生の女の子だ。最初はどうしたものかと頭を抱えたものさ。
だが、彼女の才能に助けられて次第に仕事も増えてきてね。順調にレッスンも仕事も進もうとしていた矢先だった、日高舞という女の子が現れたのは」


9: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/03/31(日) 12:10:32.15 ID:KMurB9r40
日高舞、彼女の名前には聞き覚えがある。もう10年以上昔のアイドルだったか。私でも知っている名前だ。

「彼女はまさしく神の子と言うに値する才能をもった子だった。何せ、デビューして半年でトップアイドルの座に腰を下ろしてしまうのだからね。どの現場でも日高舞、日高舞だ。
それまで活躍していたアイドルも日高舞に負けまいとして熱心に活動するものだから、ぽっと出の新人などいる場所もなくなってね。仕事も入らないし、金が回って来ないからレッスンもできない。
結局小鳥君は2年ほどでアイドルを辞めてしまった」


10: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/03/31(日) 12:13:07.49 ID:KMurB9r40
「まあ、彼女がアイドルを辞めたのは
私の所為でもあるがね。もっとしっかりとしたプロデュースをしていれば、彼女の才能があればトップアイドルになれたかもしれない。諦めなければね。
実際、日高舞はその一年後に電撃結婚して、芸能界を引退してしまった訳だから。
しかし、その前に私が諦めてしまったから、彼女を諦めさせてしまったから、結局アイドル音無小鳥は死んでしまった。
社長も同情的でね、私も音無君も引き続いてプロデューサーと事務員として雇って頂いた。
以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/03/31(日) 12:39:41.04 ID:Vf4/+LNbO
大学教授??


12: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/03/31(日) 12:43:44.79 ID:KMurB9r40
空になったカップを見つめて、目を細めると、私に向き直って彼は口を開いた。

「私はアイドルを育てたいのだよ、君。日高舞や音無小鳥のような才能をもった女の子をね。彼女たちには他のものにはない輝きをもつ宝石の原石だ。人の心を変えてしまうような輝きをもつ宝石なのだよ。
私はその輝きが見たい。その輝きが人の心を動かす所をみたいのだよ」

以下略



13: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/03/31(日) 12:45:27.38 ID:KMurB9r40
飽和量を超えた砂糖がカップの底に溜まっている。この十年ほどの間に、何が彼をこれほど変えたのかを少し理解したような気がした。
私は先ほどの話には感想を控えてもう一度質問した。

「それで、私がアイドルのプロデューサーというのはどういうことなのかね」

以下略



14: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/03/31(日) 12:47:17.46 ID:KMurB9r40
「そう、そのことだよ。君には私の新しいプロダクションでプロデューサーをしてもらいたいのだ。
正直、給料などは雀の涙ほどになるだろうし、体力的にも精神的にも大分負担がかかることになるだろう。幼い女の子を相手にするのだから、当然だ。
しかし、できる限り」

「待ってくれ高木」
以下略



15: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/03/31(日) 12:49:20.07 ID:KMurB9r40
「なぜ私がアイドルのプロデューサーになるのかね。
いくら暇だとはいえこれでも大学教授だ。私には果たすべき職務がある。芸能界に興味もないというのに、ましてや私がプロデューサーとして芸能界に入るなどということはあり得ん。
何より先ほどの話では君がアイドルを育てたいと言っていたではないか。君がプロデューサーとして活動するのではないのかね」


16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/03/31(日) 12:50:38.32 ID:PHQpaN3bo
柳沢教授かと思ったが口調が違うな


17: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/03/31(日) 12:53:31.46 ID:KMurB9r40
そう言うと、高木は苦笑して

「いや、済まない。年柄もなく急いてしまったよ。そう、君をアイドルのプロデューサーにしたいというのには私なりの理由があるのだ。まず君は素性が明らかだ。
アイドルをサポートするプロデューサーがアイドルを手篭めにしたりしてもらっては困るのでね。君と私の長い付き合いだ、その点について君は非常に安心できる。新しく若い男の中から誠実でティンと来る者を見つけるのは大層骨が折れることでね。君は私が知る者の中で最も誠実で教養ある人物なのだよ。
そして君は大学教授だ。たくさんの学生達を教え、導いてきた経験がある。
以下略



18: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/03/31(日) 12:55:42.37 ID:KMurB9r40
私は、冷めてきたコーヒーを啜りながら彼の話に耳を傾けた。高校時代から突拍子もないことを言い出す人間であったが、よもや私にアイドルのプロデューサーになれ、と言いだすとは驚いたものだ。

「高木、私はもう50だ。この年まで学問一筋にやってきた。今更芸能界へ、それもアイドルのプロデューサーとして入ることなどできまい。
芸能界のことなどさっぱり分からないし、ましてや音楽やダンスなどの知識なぞ皆無だ。
お前のように体が元気な訳でもない。
以下略



19: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/03/31(日) 12:58:11.86 ID:KMurB9r40
高木は嬉しそうに

「ああ。君には大学教授の職を辞して、私の新しい会社に来て欲しい」

「私は音楽やダンスなぞ分からん」
以下略



20: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/03/31(日) 12:59:47.46 ID:KMurB9r40
そう言うと高木は一息ついて言った。

「高校時代を覚えているかね。すっかり昔の話だが」

当然だ。
以下略



21: ◆HdrJTu3Tbs[saga]
2013/03/31(日) 13:31:36.57 ID:KMurB9r40
「君と出会ったのは2学年のころだったかね。いろいろあったものだが、卒業の日に君は一本のカセットテープをくれたろう」

憶えている。1970年代のことだ。ビートルズの時代が終わったころ、私は当時歌手を目指していた高木と一緒に、あるロックバンドを結成していたのだ。といっても、本当にやる気があったのは高木だけで、私を含めた他のメンバーは嫌々付き合っていたのだが。


132Res/51.74 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice