過去ログ - 美琴「何、やってんのよ、アンタ」垣根「…………ッ!!」3
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15: ◆nPOJIMlY7U[saga]
2013/04/02(火) 22:28:01.12 ID:Y3hy9anU0
だが、何も知らずにいれば自分は幸せだったのか? と美琴は思う。
たしかにただの一学生であれば美琴はこんな目に合わずに済んだだろう。
もっと平穏な世界で生きられたはずだ。

だがもしそうだったならロシアでは街一つが大変なことになっていたかもしれない。
以下略



16: ◆nPOJIMlY7U[saga]
2013/04/02(火) 22:31:25.27 ID:Y3hy9anU0
だから、美琴はこれまでの生き方を否定しない。
一万人の妹を救えなかったことも、一万人の妹を救えたことも。
もし『幸運』だったのなら自分の罪に気付くことさえ出来なかったのだから。

花束を二束持って歩く美琴は端的に言って浮いていた。
以下略



17: ◆nPOJIMlY7U[saga]
2013/04/02(火) 22:37:08.96 ID:Y3hy9anU0
結果から言って、美琴の予感は半分外れた。
電車を待っている時も、乗っている今も注目はされたが意外と気にしていない人の方が多かったのだ。
美琴にとっては非常にありがたいことだった。
あまりに見られていると一挙手一投足にまで気を使ってしまう。
もともとがお嬢様というより庶民に近い美琴なので、どうしても疲れるのである。
以下略



18: ◆nPOJIMlY7U[saga]
2013/04/02(火) 22:41:05.34 ID:Y3hy9anU0
それだけではない。御坂美琴は学園都市の『闇』を知りながら『表』の人間でもある。
この街の悪い面だけではなく良い面も知っている。
たくさんの出会いがあった。たくさんの物語があった。
美琴が学園都市にいなければどうなっていただろう。
勝手にクローンなんてふざけたものが作られることも、あの『実験』もなかっただろうと思う。
以下略



19: ◆nPOJIMlY7U[saga]
2013/04/02(火) 22:44:33.86 ID:Y3hy9anU0
誰にも望まれず、誰にも愛されず、生まれ、生き、そして死んでいった一万人の妹達。
そのほぼ全員を美琴は知らないし、どこで死んだのかも分からない。
ならばせめて知っている者にだけでも墓前で教えてあげたい。
妹達が何人いようと、ボタン一つで量産できる存在だろうと、その死を悲しむ人間がいるのだということを。

以下略



20: ◆nPOJIMlY7U[saga]
2013/04/02(火) 22:46:38.77 ID:Y3hy9anU0
ローファーがアスファルトをカツン、カツン、と叩く音が両側をビルに挟まれた道に反響する。
吹きつける冷たい風はビル風となって轟々と唸りを上げる。
その強い風は美琴の髪をサラサラと揺らし、更にスカートを揺らした。

辺りに捨てられている紙屑が風に乗って流され、地面を引っ掻きながら飛んでいく。
以下略



21: ◆nPOJIMlY7U[saga]
2013/04/02(火) 22:48:13.19 ID:Y3hy9anU0
「一〇〇三一号」

美琴がぽつりと呟いた。
その声は路地裏に反響することなく、強く吹きつける風の音によって掻き消される。
一度曲がったせいか吹く風は弱くなってはいたが、その音はここまで届いていた。
以下略



22: ◆nPOJIMlY7U[saga]
2013/04/02(火) 22:49:25.74 ID:Y3hy9anU0


    ――『お姉様』――


以下略



23: ◆nPOJIMlY7U[saga]
2013/04/02(火) 22:53:47.33 ID:Y3hy9anU0
ただ自分が辛い思いをしないために、吐き出して楽になりたかっただけ。
だがそれでも、彼女に謝るという行為はきっと必要だった。
あんな暴言が彼女と交わした最後の言葉だなんて嫌だった。
だから今更ではあっても、自己満足かもしれなくても、美琴は謝罪する。
そして謝らなければならないのはそれだけではない。
以下略



24: ◆nPOJIMlY7U[saga]
2013/04/02(火) 23:05:08.74 ID:Y3hy9anU0
残念ながら彼女たちに墓は用意されていない。
美琴はその場でしゃがみ込み、店で買った菊の花束を一束壁に立てかける。
死んだ者は、生き返らない。
それがこの世界における絶対の法則。
たとえ科学が二、三〇年進んでいても、能力なんてものが一般に広まっていても、魔術なんてオカルトが存在していても。
以下略



25: ◆nPOJIMlY7U[saga]
2013/04/02(火) 23:06:19.22 ID:Y3hy9anU0
垣根にも「クソシスター」などと呼ばれる始末だが、控えめに考えても美琴よりはこういったことに詳しいだろう。
十字教式にはなるが今度インデックスに頼んでみようか、と美琴は思った。
気持ちが重要とは言ったものの、やはり可能ならば本職の人間にやってもらいたい。
詳しい事情は当然話せないが、きっと頼めば引き受けてくれるだろう。
彼女の人となりはそれなりには理解したつもりだ。
以下略



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