過去ログ - モバP「なにげなくなやむしゃちょうのいちにち」
1- 20
1: ◆C7ms5oNKB6[saga]
2013/04/22(月) 10:41:53.34 ID:CqYQHVO70

それは、いつからだっただろうか。

思い直すと…私が社会人になった頃からだろうか。
少しずつ、けれど、確実に…大切なものを失っていった。
人に必ずあるべきもの。今、私はそれを…取り戻そうとしている。

最初は特に、気にもしていなかった。
まだ、若い。まだ、そんな歳ではない。
そう自分に言い聞かせてきて、気付いた。

これはただ、現実から目を背けているだけなのだ、と。

いまさら後悔しても、遅いというのに。
若き日の写真と今の私を比べると、涙が出てくる。
あのとき、こうなる前に…もっと早く手を打つべきだった、と。

原因は、なんだったのだろうか。
生活環境の変化からの、ストレスだろうか。
ああ、違う、今はそんなことを考えても仕方が無い。

文字通り、頭を抱え思案していると、その悩みはますます大きくなる。

悩んでいても、仕方が無い。
これは私自身のことなのだから。
私自身…その表現は適切ではない。

…私の、髪のことなのだから。



SSWiki : ss.vip2ch.com



2: ◆C7ms5oNKB6[saga]
2013/04/22(月) 10:51:58.46 ID:CqYQHVO70

早朝の5時に目が覚める。

習慣づけているわけではない。
けれど、どうしても起きてしまうのだ。
以下略



3: ◆C7ms5oNKB6[saga]
2013/04/22(月) 10:57:16.51 ID:CqYQHVO70

乱れた髪。

見るに耐えない。私の率直な意見だ。
完全に頭頂部の頭皮が露出している。
以下略



4: ◆C7ms5oNKB6[saga]
2013/04/22(月) 11:04:16.53 ID:CqYQHVO70

私は誰よりも髪に気を使っている。

彼らは繊細な存在だ。
酷く儚い存在だと言える。
以下略



5: ◆C7ms5oNKB6[saga]
2013/04/22(月) 11:10:32.12 ID:CqYQHVO70

整えられたスーツを取り出し、身支度を整える。

抜けた髪が、私のスーツの肩を占拠していた。
お気に入りのネクタイの上にすら、彼らはいた。
以下略



6: ◆C7ms5oNKB6[saga]
2013/04/22(月) 11:21:38.56 ID:CqYQHVO70

まずは妻の分からだった。

ラップをして保管しておけばいい。
手早く出汁巻き玉子とベーコンを焼き上げた。
以下略



7: ◆C7ms5oNKB6[saga]
2013/04/22(月) 11:27:53.30 ID:CqYQHVO70

とても食べる気になどなれない。

毛根の死滅か、ひとときの楽しみを選ぶならば。
私に選択の余地はなかった。
以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/04/22(月) 11:30:09.15 ID:GmPm1DgwO
おいこれシリアスかギャグかどっちだよwwwwwwwwwwww


9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/04/22(月) 11:46:23.47 ID:p+5twYHf0
珍しい社長SSと思ったらこれかよ
気持ちは充分わかるわ


10: ◆C7ms5oNKB6[saga]
2013/04/22(月) 11:46:48.47 ID:CqYQHVO70

まだ少し早い時間だからか、人は多くない。

駅に着き、電車を待っている間、視線を泳がせる。
さまざまな広告が、私の視線の落ち着きどころだ。
以下略



11: ◆C7ms5oNKB6[saga]
2013/04/22(月) 11:53:05.18 ID:CqYQHVO70

ああ、どうしてだというのか。

こうして小さな希望を私の前に見せつけて。
私は、藁をも掴むという心情を理解した。
以下略



12: ◆C7ms5oNKB6[saga]
2013/04/22(月) 12:03:18.10 ID:CqYQHVO70

事務所に到着すると、みなが私を迎えてくれた。

ああ、彼ら…彼女らは、私を10円玉とは思っていない。
そう。きっと、そうだ。多分。そのはずだ。
以下略



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/04/22(月) 12:06:15.56 ID:WxV1VkOYo
この社長は元PaP。
PaPはハゲるから仕方ないね。


14: ◆C7ms5oNKB6[saga]
2013/04/22(月) 12:08:38.37 ID:CqYQHVO70

「社長、今度のアイドルのCM契約の話について…」

『ああ、いいよ。どれのことかな』

以下略



15: ◆C7ms5oNKB6[saga]
2013/04/22(月) 12:13:04.33 ID:CqYQHVO70

シャンプー。

…シャンプーのCM、か。
なるほど。何らおかしくはない。
以下略



16: ◆C7ms5oNKB6[saga]
2013/04/22(月) 12:22:21.44 ID:CqYQHVO70

昼休みに入り、アイドル達も昼食をとっていた。

社内でわざわざのり弁を買って食べているのは、私くらいだろう。
妙な優越感と共に、頭に吹き抜ける虚無感に我に返った。
以下略



17: ◆C7ms5oNKB6[saga]
2013/04/22(月) 12:28:24.56 ID:CqYQHVO70

ひじき。ほうれん草。玄米。

髪の発育に良いものばかりではないか。
今日は髪…神に嫌われているとでも言うのか。
以下略



18: ◆C7ms5oNKB6[saga]
2013/04/22(月) 12:41:18.39 ID:CqYQHVO70

ちひろくんは私の事を心配し続けた。

ついに狂ってしまったのか、と思われなかっただけマシだろう。
彼女の慈愛に満ちた崇高な精神に感謝せざるを得なかった。
以下略



19: ◆C7ms5oNKB6[saga]
2013/04/22(月) 12:56:36.75 ID:CqYQHVO70

私は、記憶を辿りながら歩き出した。

まだ先ほどの目眩が取れない。振りすぎた。
確か、あの角を曲がれば、すぐそこにあったはずだ。
以下略



20: ◆C7ms5oNKB6[saga]
2013/04/22(月) 13:02:18.59 ID:CqYQHVO70

このような人も医者と呼ぶべきだろう。

医者は私の問診表と、顔と、側頭部に目をやりながら言った。
髪について悩んでいる人の頭を見ないで欲しい、とも思った。
以下略



21: ◆C7ms5oNKB6[saga]
2013/04/22(月) 13:08:35.68 ID:CqYQHVO70

死んでいる毛根が息を吹き返すことはない。

そんなことが出来ればこんな悩みは生まれない。
ああ、私はどうするべきだろうか。
以下略



32Res/19.17 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice