249:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/02(日) 07:43:12.17 ID:lXtenV6yo
◇
不意に、何かの音が聞こえた。
なんだっけ、とわたしは思う。意識は雨の音に集中していた。
250:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/02(日) 07:43:46.40 ID:lXtenV6yo
こういうとき、何も考えずに泣き出してしまえたらよかったんだろうな、と思う。
たとえば、ツキに抱きついて弱音を吐いたりして、思い切り泣いてしまえたら。
不安に思っていることをぜんぶ吐き出して、当り散らしてみたり。
251:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/02(日) 07:44:20.46 ID:lXtenV6yo
昨夜の約束のことで来たのだとツキは言った。
すぐには思い出せなかったけれど、散歩のことを言っているのだと思い当った。
わたしの頭は、いつになくぼんやりしている。
252:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/02(日) 07:44:51.64 ID:lXtenV6yo
相変わらず、生き物の気配がしない森だ。それも当たり前の話かもしれない。
昨日彼が言った、ヨモツヘグイ、という言葉を不意に思い出す。
黄泉戸喫。その言葉がなくたって、わたしはきっと気付いただろう。
253:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/02(日) 07:45:42.90 ID:lXtenV6yo
彼は何かの歌を口ずさみながら歩いた。わたしには、その光景は少し意外に見えた。
なんだったかな。明るい曲調だけれど、少し寂しげな。
悲しい曲だった気がする。よく思い出せない。
254:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/02(日) 07:46:18.08 ID:lXtenV6yo
「……そうかもしれない。疲れたのかもね」
たいした含意もなく、わたしは答えた。自分で思ったよりも、それはあからさまな言葉だった。
255:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/02(日) 07:46:57.76 ID:lXtenV6yo
ひとつ言えるのは、とツキは続けた。
「お前がどちらを選ぶにせよ、俺は戻るってことだ。それだけは変わらない。
俺は生きていくよ。でも、お前の選択によってはとても悲しい思いをすると思う。
256:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/02(日) 07:47:44.92 ID:lXtenV6yo
◇
そろそろ戻ろう、とツキは言った。わたしは彼に先に戻ってもらい、森の中に残った。
考えたいことが、たくさんあった。でも、何から考えればいいのか分からない。
257:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/02(日) 07:48:11.25 ID:lXtenV6yo
つづく
258:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/06/02(日) 07:53:03.58 ID:SM8Tf5+AO
乙乙!
物語も佳境に!……入ったのか入らないのか。
ただ雨が降り続く。
259:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/06/02(日) 09:34:23.30 ID:JfSyiqI+o
ツキに対する心境に大分変化があったな
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