361:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 07:05:47.78 ID:Z1eyICRMo
雨音がふたたび強まった。泉の水面が波立つ。
咄嗟には、何も言えなかった。
わたしも何も言わなかったし、彼も何も言わなかった。
362:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 07:07:03.39 ID:Z1eyICRMo
「……あなたを探しに」
わたしがそう答えると、彼は怪訝そうな顔になった。
それから少し間を置いて、ばからしいと言いたげに笑う。
363:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 07:08:43.16 ID:Z1eyICRMo
「それで、俺が逃げてるとしたら、お前は何しに来たんだ?」
ツキは皮肉っぽく唇を歪める。
わたしは段々不安になってきた。
364:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 07:10:25.06 ID:Z1eyICRMo
「それで?」
「それで、って?」
365:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 07:11:34.21 ID:Z1eyICRMo
「わたしは出口を教えるために来たの。シラユキから、聞いてきた」
「そうか」
366:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 07:13:26.56 ID:Z1eyICRMo
「もういいんだよ。お前をどうこうしようとも、思わない」
「何があったの?」
367:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 07:14:30.06 ID:Z1eyICRMo
「お前のこととは、関係ないよ。関係ないんだ。
ただ、なんていうのかな。もう疲れたんだ。別に帰れなくたって、捕まったってかまわない。
だから、助けはいらなかったんだよ、アヤメ。お前は屋敷に戻れ。俺はここに残るから」
368:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 07:18:53.19 ID:Z1eyICRMo
「屋敷に戻れ、アヤメ」
わたしはとても悲しい気持ちになる。
自分がここで悲しむのはおかしいのだとも思った。
369:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 07:19:46.62 ID:Z1eyICRMo
見かねたように、ツキは言う。
「行けってば」
370:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/09(日) 07:20:57.64 ID:Z1eyICRMo
◇
木々の中を歩いていく。自分がどこを目指しているのか、分からなかった。
何もかもが覚束なく、頼りなかった。
633Res/436.26 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。