479:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/16(日) 07:33:13.24 ID:2Yrmim71o
檀上は思ったよりも広く、また寒々しかった。
見下ろす視界は人と傘で覆い尽くされている。
階段を昇るとき、村長が傘を畳むように言った。
480:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/16(日) 07:33:44.33 ID:2Yrmim71o
その一瞬のゆらぎが、わたしを余計に混乱させる。
「さすがにあなたの腕では、首を落とすのは難しいでしょうね」
481:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/16(日) 07:34:25.29 ID:2Yrmim71o
「これから先のことは、すべてあなたが選んでください」
「ちょっと待って、選ぶも何も、この状況じゃ――」
482:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/16(日) 07:35:41.41 ID:2Yrmim71o
シラユキはわたしの手のひらに銃を握らせる。それからわたしに弾丸を込めるように言った。
わたしは混乱しながらも、人々の目を気にして、弾倉に弾を込める。
何が起こっているんだろう。どうしてこうなったんだろう。
483:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/16(日) 07:36:44.97 ID:2Yrmim71o
わたしが黙り込んでいると、ツキを抑え込んでいた二人の男が、彼を濡れた地面にうつ伏せに組み伏せた。
それを遮り、ふたりをツキから離れさせる。
彼は特に縛られていたわけでもなかった。もう全身は自由だ。
484:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/16(日) 07:37:15.80 ID:2Yrmim71o
「どうしてわたしが、ツキを殺さなきゃいけないの?」
まずいと思ったけれど、そう言わずにはいられなかった。
檀上に集う視線。わたしを見張る何人かの人々。手に握った拳銃。
485:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/16(日) 07:39:20.53 ID:2Yrmim71o
「それじゃあ順番が逆だ。お前は選ばなくちゃいけないんだよ。俺を殺すか、俺を殺さないか」
「どうして?」
486:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/16(日) 07:40:29.50 ID:2Yrmim71o
「生き長らえるつもりがないなら、俺が生きるか死ぬかだって些細なことだ。
いまさら俺が生き残るかどうかなんて気にしない。そうだろ。
だってお前は、俺のことなんてどうでもいいと思ったからこそ、死のうとしたんだから。
後のことなんてどうなったってかまわないって思ったから、ここに来たんだろう。
487:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/16(日) 07:41:24.32 ID:2Yrmim71o
わたしは少し考えてから、彼の疑問に答えた。
「あなたの価値とか、世界そのものの価値とか、関係ないんだよ、ツキ。
わたしはただ、わたしとして生きるのが嫌になったから、死んでしまいたいの。
488:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/16(日) 07:42:18.18 ID:2Yrmim71o
街の人々は、なにも言わない。
わたしたちのやりとりなんてまるで聞いていないようだった。
「殺せよ」
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