51:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/21(火) 07:15:39.54 ID:0/iJLpbGo
◇
シラユキが仕事を始めると、わたしは暇になってしまった。
本当は彼女のことを追いかけまわして一緒にいたい気持ちもあるけれど、からかわれるのが目に見えている。
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2013/05/21(火) 07:16:48.85 ID:0/iJLpbGo
書庫は地下にあるから、昼に行っても薄暗く、肌寒い。
蔵書の正確な量は分からないが、尋常な量ではない。
もし確認しようとするなら、本棚の数から数えなければならないだろう。
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2013/05/21(火) 07:18:32.71 ID:0/iJLpbGo
ひんやりとした冷たい空気と、宿命的なカビの匂い。
林立する本棚の隙間を縫うように歩く。
書庫はあまりに広い。ひとひとり隠れていたって、わたしはきっと気付かないだろう。
54:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/21(火) 07:20:09.12 ID:0/iJLpbGo
わたしは溜め息をついて、近頃の自分について考えた。
妙に不安になったり、落ち着かなくなったりする自分。
何が原因なのだろう? 考えると答えはすぐに出てきた。
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2013/05/21(火) 07:22:35.19 ID:0/iJLpbGo
単なる夢でないとするなら、二つ、考えられる気がした。
まず素直に考えるなら、実際にわたしが、そういう経験をした、という可能性。
過去に見た映像、過去に経験したシーンを、わたしは繰り返し見ているのだ。
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2013/05/21(火) 07:23:17.37 ID:0/iJLpbGo
もうひとつの可能性は、冗談のようなものだが、予知夢のようなものだという可能性。
あるいは、誰か知らない人が、わたしが寝ている間に、わたしの頭に直接交信しているとか。
……ばかばかしい、とわたしは思った。
57:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/21(火) 07:25:26.14 ID:0/iJLpbGo
そういえば、とわたしは思う。
昨晩、シラユキと一緒に眠ったときにみた夢は、いつもとは違った。
ここのところ、ほとんど毎晩のように彼の夢を見ていたのに、昨夜のものは違った。
58:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/21(火) 07:26:17.24 ID:0/iJLpbGo
わたしは立ち上がって、夢について書いてありそうな本を探すことにした。
これだけ蔵書があるのだから、あってもおかしくない。
でも、いくら本を読んでも無駄だという気もした。
59:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/21(火) 07:28:08.18 ID:0/iJLpbGo
「……シラユキ?」
声を掛けたけれど、返事はなかった。
背筋がざわざわする。シラユキなら、すぐに返事を寄越す。
60:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/21(火) 07:29:14.99 ID:0/iJLpbGo
物音のした棚と棚の間を覗き込む。誰もいない。
けれど、本が一冊、床に落ちていた。
わたしは少し怖くなったけれど、さっき自分が歩いた棚だったので、そのとき何かの拍子に落ちたのかもしれないと思った。
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