592:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/24(月) 03:59:19.02 ID:k0zfLIWso
「シラユキ」
とわたしは彼女の名前を呼んでみた。
答えはないかもしれない。でも、とにかく呼びかけてみた。
593:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/24(月) 03:59:59.59 ID:k0zfLIWso
雨の音と風の声が絶えず響いている。
わたしは少しの間、何も考えずにその音に耳をすませていた。本当に何も考えなかった。
594:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/24(月) 04:00:42.02 ID:k0zfLIWso
ふと、泣き声が聞こえた気がした。
それは向こう側から聞こえていた。誰の声だろう。知っている人の声だ。
わたしはその人がそんなふうに泣くのを初めて聞いた。とても激しい泣き方だった。
595:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/24(月) 04:01:21.30 ID:k0zfLIWso
もういいじゃないか、とわたしは思う。
ぜんぶ終わりにしよう。やめてしまおう。もう怖い思いをするのは嫌だ。
わたしは体を動かした。シラユキに何かを言おうと思ったけれど、口がうまく動かなかった。
596:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/24(月) 04:01:48.89 ID:k0zfLIWso
もう一度、向こう側へ繋がる穴を、わたしは振り返った。
何も映っていない。ただ、音だけが聞こえる。景色は滲んでいる。
わたしは急に泣きたい気持ちになった。心細いような、寂しいような、そんな気持ちに。
597:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/24(月) 04:02:25.19 ID:k0zfLIWso
そっか、駄目なのか、とわたしは思った。
そうだろうな、駄目なんだろう、きっと。駄目なら仕方ない。
ツキがこんな声で、必死になってわたしに語りかけているのだ。
598:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/24(月) 04:03:10.48 ID:k0zfLIWso
「わたし、帰るね」
とわたしは言った。シラユキは、また、困ったように笑った。
それから小さく頷く。彼女の仕草はいつだって変わらない。
599:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/24(月) 04:04:00.05 ID:k0zfLIWso
シラユキはまだ何かを言いたそうにしている。
わたしはその言葉を待っていたけれど、その声はいつまで待っても訪れなかった。
やがて、彼女はふわりと笑う。わたしはなんだかくすぐったいような気持ちになった。
600:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/24(月) 04:04:43.85 ID:k0zfLIWso
つづく
次で終わると思います
601:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/06/24(月) 08:58:03.67 ID:4wq5qYX5o
おお、やっと決心したか。
乙です。
633Res/436.26 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。