946: ◆p4MI6fJnv2[sage saga]
2014/01/06(月) 02:10:36.19 ID:0WwRA8qdo
通常作投下します。
6レスです。
947:私たちの台所 1/6 (お題:隠し味) ◆p4MI6fJnv2[sage saga]
2014/01/06(月) 02:11:29.72 ID:0WwRA8qdo
私の家には代々、台所において、女性の間だけで密かに受け継がれてきたものがある。
それは厳格な決まり事として曾祖母から祖母へ、祖母から母へと、先祖から今日に至るま
で連綿と受け継がれてきた。大まかに言うと一つは調理の技術。これは技術を含む、台所
に関わる知識や知恵すべてを指している。そして一つは調理をするための道具である包丁
だった。どちらも、ともすれば一般的なことかもしれない。けれど私の家では、台所はま
948:私たちの台所 2/6 (お題:隠し味) ◆p4MI6fJnv2[sage saga]
2014/01/06(月) 02:12:27.83 ID:0WwRA8qdo
私は祖母や母から、ずっと決まり事について聞かされてきたし、包丁自体も母が使って
いたから何度も目にしていた。だから私は包丁を譲り受けることが決まっても、さして何
も感じなかった。ただ、ああそういう時期が来たのだな、というふうにしか思わなかった
のだ。けれど実際にその包丁を母から受け取り包丁の柄を握りしめると、私はえも言われ
ぬ感慨に襲われた。私はほんとうに幼い頃から技術を教え込まれていたのだが、包丁を握
949:私たちの台所 3/6 (お題:隠し味) ◆p4MI6fJnv2[sage saga]
2014/01/06(月) 02:12:58.69 ID:0WwRA8qdo
だった。解体した後に残ったのは、ほとんど骨と皮だけだった。ほんとうに骨と皮だけが
残るのだ。私はときどきその技術に笑いそうになった。どうやら尊敬や感心を越えると笑
ってしまうらしい。私が見とれているうちに体毛や皮が剥がされ、切り開かれ、内蔵がそ
の形を保ったまま取り除かれ、血液の洗浄、四肢の切断から筋肉の削ぎ落としまであっと
いう間に終わってしまう。私はそれらの作業を頭に叩き込もうとするのだが、気がつくと
950:私たちの台所 4/6 (お題:隠し味) ◆p4MI6fJnv2[sage saga]
2014/01/06(月) 02:13:34.25 ID:0WwRA8qdo
られる気持ちがした。私はそれからどのような経緯を経て、今、自分が母と接しているの
かあまり覚えていない。ただ一つ今思うことは、グロテスクというのは鼓動しながら外界
に晒された内蔵の集合なんかでなく、そんな状態を作ろうとした、いや、実際に作った母
の意識、意思ではないだろうか、と今では思っている。
951:私たちの台所 5/6 (お題:隠し味) ◆p4MI6fJnv2[sage saga]
2014/01/06(月) 02:14:09.73 ID:0WwRA8qdo
した技術を伝えることはとても大事なことなの。時には味の悪い食材や味のない食材を使
わないといけないときもある。だから私たちは調理によって美味しいと感じる味を作らな
いといけないの。悪い味をどうにかして隠してしまわないといけない。私たちの技術はい
わば隠し味っていうわけ。もちろん一般的な隠し味とは意味合いが違うけど。実際のとこ
ろ、私たちはその恩恵を受けて生きている」
952:私たちの台所 6/6 (お題:隠し味) ◆p4MI6fJnv2[sage saga]
2014/01/06(月) 02:14:39.32 ID:0WwRA8qdo
ら伝わる感触がとても心地いい。ざらざらとしていて、つるつるとしている。空気も水も、
心臓が震えるほどに冷たいが、私はこの研いでいる感触がとても好きだ。
「ん……んん……」台所の隅からうめき声がしている。
「大丈夫、そんなに怯えないで」私は包丁を研ぎながら、豚肉のように紐で縛られた男を
953:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage saga]
2014/01/06(月) 02:16:41.75 ID:0WwRA8qdo
以上です。
テーマが未消化ですが、ギブアップ。
954:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/01/06(月) 02:28:25.91 ID:0WwRA8qdo
お題ください
955:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/01/06(月) 03:25:43.30 ID:Xhr3B9ut0
>>954
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