28: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/08/24(土) 09:33:49.64 ID:Eikl4zs70
  
 少女「それで、『天網恢恢疎にして漏らさず』さん、どうして電話を」 
  
 ??「ん? 私の生き様を知ってるの?」 
  
29: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/08/24(土) 09:34:23.35 ID:Eikl4zs70
 ―――――――――――――――――――――― 
  
  眼が覚めたら激痛は消えていました。崩壊した我が家も元通り。あのぬいぐるみは約束を違えることはなかったようです。有言実行、さすがですね。 
  まさか全てが夢だったのではと逡巡します。手を繰り返し、ぐーぱー、ぐーぱー。 
  
30: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/08/24(土) 09:34:54.99 ID:Eikl4zs70
  
  とはいえ昨晩の出来事が夢でないのなら、私は絶賛戦時中みたいなものでしょう。片足どころか両足を突っ込んだレベルで。後悔はしていませんし、死ぬことも……怖くないと言ったら嘘になりますけど。 
  ただ、リターンを得るためには相応のリスクを得なければならないことも事実。この世から嘘を消し去るという目的のためには、命を懸けるだけの価値があります。 
  
  静謐な空気を味わいながら、私は教室の扉を開きます。HRの十分前。これが私のいつもの登校時刻なのです。 
31: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/08/24(土) 09:35:39.28 ID:Eikl4zs70
   
 黒マント「ここは常しえの魔境! 我が異能を以て塵と化すがいいわ!」 
  
  黒マントの目が妖しく光りました。黒い光を放って、同時に椅子や机が同様の光を帯び、がたがたがたっと持ち上がります。触れることなく。 
  
32: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/08/24(土) 09:38:20.74 ID:Eikl4zs70
  
  そこで私は昨日の電話の主を思い出します。『天網恢恢疎にして漏らさず』。考えられるのは今のところあいつしかいませんが、果たして。 
  
  それにしてもこの静けさです。人っ子一人の気配すらありません。いや、もともと気配なんて読めませんけど、なんにしても、夢じゃなかった。 
  
33: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/08/24(土) 09:39:47.12 ID:Eikl4zs70
  
 「闇に呑まれよ」 
  
  闇と言うのは名ばかりで、私に向けて振ってくる大量の机、机、机。 
  私の影が机の影にすっぽりと飲み込まれて、瞬間、ひときわ強く地面を踏みしめました。このままでは圧死確実。 
34: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/08/24(土) 09:41:49.74 ID:Eikl4zs70
  
  ざく、と砂を踏みしめる音が聞こえました。眼球だけを動かしてそちらを見れば、女生徒が一人、短く悲鳴を上げて後ずさっています。 
  
  見たな、と黒マントは小さく呟きました。 
  
35: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/08/24(土) 09:43:30.64 ID:Eikl4zs70
  
 少女「言いましたね?」 
  
  口の端が吊り上るのがわかります。 
  
36: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/08/24(土) 09:44:40.27 ID:Eikl4zs70
  
  超常の光が私を中心に満ちました。それは机と椅子を包んでいた黒光を打消し、下敷きになっていた私を吹き飛ばします。 
  どこへ? ――当然、友人のところへ。 
  即ち、私の教室へ。 
  
37: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/08/24(土) 09:47:36.30 ID:Eikl4zs70
  
  私の背後は教室で、死体が山と積み重なっている。ここは三階で飛び降りても死にはしないだろうけれど、脚は折れるだろう。そして追いつかれて死ぬ。結局死ぬのだ。 
  ならば真正面、この黒マントを何とかするしかほかに方法はない。 
  
  やはりこうなるのか。 
38: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/08/24(土) 09:49:23.10 ID:Eikl4zs70
  
  隠してやがりましたね。謀ってやがりましたね。苛立ちはありますが、しかし黒マントは嘘は言っていないのです。何も言っていないだけで。 
  それなら私が責める謂れはありませんでした。それが唯一の私の生き様ですから。 
  
  力の入らない右腕にこそ力を籠め、四つん這いの姿勢から一気に飛びかかる! 
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