38: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/31(土) 21:25:12.95 ID:5XV/thQ7o
宿泊するホテルの側に、ここまでアヤシイお店があるのも何かの思し召し。
そう、何とか気勢を奮い立たせて私は扉を開きました。
「カランコロン」と鐘の音が響く中、歩を進めてまいります。
外はあれだけ天気が良いにも関わらず、店内は冬の曇り空のように薄暗くありました。
39: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/31(土) 21:29:25.25 ID:5XV/thQ7o
壁には全国各地のペナントや外国のナンバープレートに絨毯のような毛織物、ショーウィンドウにもあったお面、優勝旗のようなものも貼り付けられてあります。
眼前の棚には、皿のない天秤や自由の女神の置物、罅割れたワイングラスに文字盤が左右反転した時計など、分類分別区別もなしに陳列されています。
奥を覗き込めば、レジカウンターと思しき所に老婆が一人、椅子に腰掛けているように見えました。
伸びるに任せた灰色の髪。黒い外套に、黒いトンガリ帽子。トドメとばかりにその手には杖までもが握られております。
40: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/31(土) 21:31:49.85 ID:5XV/thQ7o
先程は気づかなかったのですが、カウンターの上には赤子の頭くらいの水晶球が置かれております。
これはいよいよ魔女に違いない、と私は確信を強めずにはいられません。
食い入るように水晶球を見つめていたものですから、老婆は「これかい?」と、しゃがれ声を発しました。
41: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/31(土) 21:33:17.90 ID:5XV/thQ7o
「そもそも、占いなんてものは存在しなかった。昔々の世には、本物しかいなかった。」
「本物、ですか?」
42: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/31(土) 21:42:35.20 ID:5XV/thQ7o
「まぁ、そんなもので信じる奴は最初から信じてたと思うがね。少なくとも説得力は微増でもしたんだろうさ。
亀の甲羅で吉凶を占う話なんかは聞いたことあるだろう? それにお嬢ちゃんは、水晶球を占いにつかうものだとも思った。」
老婆は続けます。
43: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/31(土) 21:49:54.23 ID:5XV/thQ7o
「こんな話をするために呼んだんじゃなかったんだよ。えーと、確かこの辺りに――。」
ふぅと息を吐いた彼女は、がさがさと何やらカウンターの下を漁り始めました。
どこにそんなスペースがあったのか、石膏像やら木彫の熊やらが引っ張り出されては水晶球の隣に並び始めます。
44: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/31(土) 22:00:20.19 ID:5XV/thQ7o
そんな有難いお話を聞いた私は、何だかこのヘアピンが愛おしいものに見えてきたのですから現金なものです。
代金を支払おうと鞄から財布を取り出すのですが、老婆はお金を受け取ろうとしませんでした。
「若い子と話す機会なんて、この歳になるとそうそうないのさ。」とは彼女の言葉であります。
45: ◆bsVOk5U9Es[saga]
2013/08/31(土) 22:03:33.09 ID:5XV/thQ7o
ここまでです
また溜まったら投下します
46:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/09/01(日) 12:05:12.66 ID:QUee8xDlo
この空気好き
茄子さんぺろぺろ
47:以下、新鯖からお送りいたします[sage saga]
2013/09/02(月) 12:52:55.73 ID:Le1cFD8Ho
なんかこう……いいな。乙
48:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/05(木) 14:45:00.20 ID:VcPN2SDGo
せめて読点のあと一行開ければ読みやすいのにと思いました まる
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