1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/09/27(金) 22:37:08.15 ID:VUF0yUpA0
人狼ゲームで狐の儚さと孤独さに泣いた 
 そんな哀しい狐に捧げるおとぎ話です
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/09/27(金) 22:38:38.91 ID:VUF0yUpA0
  
 おれは狐だ。 
  
 人間ならば30歳くらいか。 
 野生にしては長く生きている方だろう。 
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/09/27(金) 22:39:01.52 ID:me5PZJbAo
 ほう 
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/09/27(金) 22:40:11.34 ID:VUF0yUpA0
  
 ここから下を見おろすと、南側には小さな村が見える。 
 印象的な鉄塔が立っていて、20人足らずの人間が暮らす素朴な村だ。 
 羊やヤギなどの家畜、そして俺の大好きなトリを飼い、日々自給自足している。 
 冬場に飯に困るとちょくちょく失敬しているが、まああれだけいるんだから許してくれ。 
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/09/27(金) 22:43:35.35 ID:VUF0yUpA0
  
 ・・・・そうだ、最初に"ずっと孤独"といったが、ガキのころ、人間どもが 
 おれを受け入れていた時があった。 
  
 肉食いで野生の狐という生き物が受け入れられていた理由、 
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/09/27(金) 22:52:38.96 ID:VUF0yUpA0
  
 あの頃のおれは、食い物の礼ってわけじゃないが、おれなりに何か返そうとしていた。 
  
 体を触られるのは気持ちいいばかりじゃなかったが、多少痛くても我慢した。 
 (人間のガキどもはおれのしっぽが大好きでよく取り合いになっていたものだ) 
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/09/27(金) 22:59:19.29 ID:VUF0yUpA0
  
 狼が家畜を襲おうとすれば、ガキだったおれは番犬のように遠吠えして知らせてやった。 
  
 あのときには狼はまだ8匹もいたが、おれの知らせで待ち構えていた狩人によって 
 そのうち3匹が仕留められた。 
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/09/27(金) 23:01:30.71 ID:VUF0yUpA0
  
 足が竦んで動けないおれを余裕の笑みで眺めながら、ジリジリと、 
 油断も隙もなく囲みを縮めてくる狼。 
  
 まさに絶対絶滅。 
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/09/27(金) 23:19:43.39 ID:VUF0yUpA0
  
 痛いような、痒いような、気持ち悪いような、笑ってるのに泣いてるような、 
 おかしな気分になった、という「記憶」はある。 
  
 だが今のおれにはその時の感情はもう思い出せない。 
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/09/27(金) 23:25:40.12 ID:VUF0yUpA0
  
 今日はここまで 
 携帯で打ったら変な変換されてました 
  
 ×絶体絶滅 → ○絶体絶命 
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/09/28(土) 00:51:19.77 ID:9e2s2rd9o
 乙 
 待ってる 
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/09/28(土) 07:28:41.48 ID:KPBJriFTo
 乙でした 
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/09/28(土) 16:21:09.27 ID:uwnjQEu20
 なんか面白そう 
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/09/28(土) 21:19:34.71 ID:hDad05Pp0
  
 読んでくれた方ありがとう 
 続きです 
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/09/28(土) 21:21:11.09 ID:hDad05Pp0
  
 それからおれはもっと頻繁に村に行くようになった。 
  
 飼い狐といっても良かったかもしれない、あの頃のおれは。 
 どのみち同種の仲間がいるわけでもなかったおれにすれば悪くなかった。 
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/09/28(土) 21:27:17.41 ID:hDad05Pp0
  
 次の冬、激しい雪と風が吹きすさんだあの日、狼はついに動いた。 
 やつらの計画遂行は、すなわち俺と人間との奇妙な蜜月の終わりを意味した。 
  
 激しく吹き付ける雪が狼の黒い体躯を白く覆い、 
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/09/28(土) 21:50:43.73 ID:hDad05Pp0
  
 やつらのやり方は非常に単純だったがゆえに効果的だった。 
  
 まず一匹の狼がトリ小屋を襲った。 
 雪風除けに立てかけてあった板をどかし、網を食い破るなどやつらにとっては朝飯前。 
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/09/28(土) 21:57:04.23 ID:hDad05Pp0
  
 村に着いたときには、狩人は赤い雪に散らばってピクリとも動かなかった。 
  
 その狩人は、いつか狼からおれを助けてくれた、あの人間。 
  
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/09/28(土) 21:59:07.48 ID:hDad05Pp0
  
 食い破られた小屋から逃げ惑うトリ達。 
  
 血に染まった雪に横たわる狩人。 
  
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/09/28(土) 22:15:45.88 ID:hDad05Pp0
  
 おれはまんまと嵌められたのだ、狼に。 
 あっぱれ過ぎて言葉もない。 
 ただおれが甘ったれでマヌケだっただけだ。 
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/09/28(土) 22:42:21.19 ID:hDad05Pp0
  
 おれは本当の意味で"孤独"となった。 
 ガキなりに、もう今までのように村に行けないことくらいわかっていた。 
  
 人間たちは何度かおれを狩りにきた。 
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