13: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/10/18(金) 00:13:04.45 ID:BTrtdNaVo
(まあ、新設されるんだから知らなくて当然なんだけど)
その日の僕は、これ以上ないぐらいくらい楽観的であり、同時に悲観的でもあった。
すなわち、新しい仕事がどの程度、自分をこの職に留めておいてくれるのかという、聞く人が聞けば、傲慢と受け取られること間違いない考えである。
14: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/10/18(金) 00:13:33.76 ID:BTrtdNaVo
『ええと、シンデレラガールズ・プロダクションまで。住所は――』
タクシーの運転手へそう伝えると、扉が閉まり、タクシーが動きはじめる。
僕は、ビジネスバッグのポケットへスマートフォンを仕舞い込むと、少しの間目を閉じる。駅からおよそ十五分の距離だ。大通りを進んで、少し支道へと逸れた場所にあるらしい。
15: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/10/18(金) 00:14:08.08 ID:BTrtdNaVo
『大きい……、のかな?』
社屋を見て、僕はそう零した。疑問符がついてしまうのは、この社屋よりずっと大きい社屋を持つ会社で働いていたことがあるからだ。
比べるものではない、とは思うものの、どうしても比べてしまうのは人間の性だろうか。
16: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/10/18(金) 00:14:37.74 ID:BTrtdNaVo
しばらく呆然としていた僕だったが、我に返ると、恐る恐るそのデスクへと近づく。すると、その向こうからがりがり、とペンを走らせる音が聞こえてくる。
『失礼します、どなたかいらっしゃいますか?』
僕はデスクの向こうへと声を掛けると、次の瞬間、
17: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/10/18(金) 00:15:31.22 ID:BTrtdNaVo
「ああ、せっかく積み上げた書類が……っ」
『大丈夫ですか』
「あっ、はい、大丈夫ですよ! それで、どのようなご用件で?」
18: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/10/18(金) 00:15:59.07 ID:BTrtdNaVo
『いらっしゃらない?』
「ええ。西のほうへいってから北の方へ、アイドルとスタッフを捜してくると言い残して、カバン一つだけで行かれました。まあ、いつものことなんですが」
プロデューサーは、少し苦笑をしながら、そう言った。
19: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/10/18(金) 00:16:36.50 ID:BTrtdNaVo
ちひろ、と呼ばれたその女性は、プロデューサーに向けて少し微笑みかけると、今度は僕のほうへ向けて微笑んでくる。
「初めまして、ようこそシンデレラガールズ・プロダクションへ、Pさん。私、プロデュース部門の専属事務員である、千川ちひろ、といいます」
『……初めまして、Pといいます』
20: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/10/18(金) 00:18:20.00 ID:BTrtdNaVo
「と、ともかく、社長からお聞き及びしたところ、今日から出勤とのことらしいので、社長が不在の間は、私が研修を受け持たせていただきます」
『……は?』
「どうか、なさいましたか?」
21: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/10/18(金) 00:18:49.92 ID:BTrtdNaVo
「……もしかして、聞いてらっしゃいませんでしたか?」
『ええ、十四時にくるように、とだけ』
「あの社長、またですか。本当、豪放というか、適当というか……」
22: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/10/18(金) 00:20:36.16 ID:BTrtdNaVo
『ええ、大丈夫ですが。……何か、業務があるのですか?』
「いえ、業務ではないですね。ただ、今後業務をこなしていくために、Pさんにはまず芸能事務所の事に関して、勉強をして欲しい、という社長のご意向です」
この業界は少し特殊ですから、と少し苦笑を浮かべ、千川さんは言う。どうも、書類の整理から基本的な業務の一部始終まで教えてくれるようだ。
23: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/10/18(金) 00:21:48.06 ID:BTrtdNaVo
本日の更新は以上です。次回の更新は予定通り週頭の月-火曜に行います。
それでは、読んで下さりありがとうございました。
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