10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/22(日) 22:17:43.67 ID:QCk4Nap1o
「ありがとう」
再び助け起こすと彼女は何故かにやにやしながら「シナノ」と続けた。
「シナノ?」
「わたしの名前。みたいな」
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/22(日) 22:18:15.69 ID:QCk4Nap1o
シナノに家の場所を訊くと、ぼくが元来た住宅地の辺りにあるらしかった。
「え?」
ぼくは怪訝に思ってもう一つ訊ねた。
「家に帰るところじゃないの?」
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/22(日) 22:19:33.66 ID:QCk4Nap1o
大通りには帰宅の車が何台も行き交っていたが、歩行者はいなかった。
信号を渡って、真っ直ぐ進んだ。
川沿いの道で、右側に土手、左側に昔ながらの小ぢんまりとした民家が並ぶ。
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/22(日) 22:20:07.01 ID:QCk4Nap1o
それからまたしばらく黙々と二人で進んだ。
右に小さな橋が川をまたいで掛かっていて、向こうに大きな建物の影が見えた。
確か小学校があったはずだ。かつてはぼくも通っていた小学校である。
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/22(日) 22:20:32.81 ID:QCk4Nap1o
仕方なくぼくは別の話題を探した。
シナノのような若い子の話すことなんて分からなかったし、同世代とだって上手く話せない自信があったけれど仕方なくだ。
「夜って閉じてるよね」
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/22(日) 22:21:07.96 ID:QCk4Nap1o
「暗くなると視界が利かなくなるせいかな、見渡せる範囲が狭くなる。
きっとそれでどこにも行けなくなるんだとぼくは思う」
「気分の問題じゃない?」
その時シナノが大きくよろめいた。
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/12/22(日) 22:22:34.77 ID:QCk4Nap1o
ここまで
今晩までに完成したかったけれど失敗。少しずついきます
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/23(月) 22:39:59.15 ID:UxR6K1hvo
「夜の向こうには何があるかな」
ぼくがぽつりと言うとシナノは気のない声で、さあ? と返してきた。
「夜の次は朝だから太陽じゃない?」
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/23(月) 22:40:28.09 ID:UxR6K1hvo
「コウは変な人だね」
シナノはそう言ったが声には特別なニュアンスはこもっていないようだった。
バッタを見て「あ、バッタ」と言うくらい当たり前に当たり前のことを言っている口調だった。
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/23(月) 22:41:49.87 ID:UxR6K1hvo
大学生の頃、統合失調症と診断された。
その時のことはよく覚えていない。
急性期といって症状が一番顕著に出ていた時期だからだ。
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/23(月) 22:42:32.76 ID:UxR6K1hvo
それでもまあ一旦適切な医者にかかればそれで事足りた。
現代医療の力は偉大で、ぼくは薬品の効力によってすっきりと再生し、今は夜の向こう側の探究に出ている。
それが健全なことかどうかは分からないけれど、とりあえずはもう恐怖はない。
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