93:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/12(水) 00:07:00.72 ID:rvZEoW38o
ほとんど初心者同然の、美樹さやかのそれに、だけど私たちは聞き入った。
深い深い海の底で、バイオリンの弓と弦が擦れ合う。
生まれているものは鎮魂歌か、それとも別の何かか。
そういった知識に乏しい私には、耳を傾けることしか出来なかった。
94:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/12(水) 00:08:00.25 ID:rvZEoW38o
「で、さ」
95:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/12(水) 00:09:04.47 ID:rvZEoW38o
「……そっか」
96:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/12(水) 00:10:11.69 ID:rvZEoW38o
「……ん。しょうがないなあ、もう」
97:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/12(水) 00:10:55.04 ID:rvZEoW38o
そして、聴き覚えのあるピアノがどこからか流れ始める。
ここが彼女の世界なら、それくらいのことは簡単なのかもしれない。
曲名に心当たりは、あった。
いくら教養に疎い私と言えど、それくらいの知識はあった。
98:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/12(水) 00:12:36.22 ID:rvZEoW38o
美樹さやかの表情は、穏やかだった。
音色に浸るでもなく、演奏に注力するでもなく。
ただ記憶の欠片を拾い集めながら、頭の中のそれを再現している、そんなような感じだった。
そんな彼女を見て何を思うのか、ステージから佐倉杏子が、小さな声で、聞く。
99:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/12(水) 00:13:33.11 ID:rvZEoW38o
一度、休みに入ったのか、バイオリンを置いて。
変わらず続くピアノの音を聴きながら、彼女は遥か高くを見上げる。
その先には水面があって、空が在る筈だけれど、深く淀んで何も視えない。
100:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/12(水) 00:15:25.91 ID:rvZEoW38o
愛おしそうに、バイオリンを抱きながら、美樹さやかが言う。
言う通り、それが、潰れた彼女をまた繋ぎ合せたのだろう。
そんな様子に何を思うのか、佐倉杏子はまた声を震わせる。
101:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/12(水) 00:15:53.50 ID:rvZEoW38o
息を継ぐ間もないほどの勢いで、吐きだされた疑問には、答えずに。
バイオリンを離して、休んで、また肩に乗せて、弾き鳴らす。
幾小節かを終えてやっと、彼女は返事のための口を開いた。
102:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/02/12(水) 00:16:37.25 ID:rvZEoW38o
「生き帰ってさ、色んな心残りを果たしたとしてもさ」
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