78: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/04/18(金) 11:53:09.85 ID:hodrlcSw0
古ぼけた家だった。木製の扉に真鍮のドアノブ。映画でしか見たことのないドアノッカーまでついている。これ、絶対に指を挟むと思うんだけどなぁ。
ドアノブは容易く回った。油をきっちり挿してあるのか、予想以上にスムーズに、音を立てない。そのまま引くと、これまた蝶番は軋む気配すら見せない。あたしは警戒を強めながらも屋敷の中へと足を踏み入れる。
扉が閉まった。電気はついているが、薄暗い。
79: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/04/18(金) 11:53:55.63 ID:hodrlcSw0
玄関から一気に枝分かれする廊下。そしてそれぞれに二階に上がる階段。いくつもの扉がぱたぱた開閉をしていて、まるであたしを取って食おうとしている幽鬼の類。
しかし惑わされることなどはないのだ。一条の光があたしの道しるべとなる。それをただ追っていけばいいだけなのだから。
80: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/04/18(金) 11:55:32.62 ID:hodrlcSw0
??「聞こえてます、か。聞こえてたら、右手を挙げてください」
……どういうこと?
この声の主が敵であるのには、恐らく間違いはないと思う。能力を使わなくとも想像はつく。けど、どうにも緊張感を欠く。ここであたしにコンタクトを取ることに一体どんな意味が……。
81: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/04/18(金) 11:56:21.75 ID:hodrlcSw0
あたしは返事の代わりに弾丸を壁へとぶち込んだ。大きなひびが入るが、それもすぐに修復されていく。弾丸が飲み込まれるように壁へと沈み込んでいった。
腕章「……」
82: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/04/18(金) 11:57:03.63 ID:hodrlcSw0
携帯を閉じ、とりあえずということで彷徨することにした。扉を覗けばその奥にはまた廊下。廊下ばかりがつながっていて、部屋などはどこにも見えない。まるであみだくじだ。
あみだくじなら先に当たりがあるのが前提。だけどあたしの場合、その保障はどこにもなくて。
実に厄介。
83: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/04/18(金) 11:57:35.93 ID:hodrlcSw0
僅かにあたしのスタートの方が早い。スカジャンの裾を挟む形で壁が閉じ、同化する。スカジャンもその中にきっちりと埋まっている。
構造変化はどうやら一端の終結を告げたようで、耳鳴りのするような静寂がいつの間にか戻っていた。目を凝らしてあたりを窺ってみるも、特に動きはない。
スカジャンを脱いでせめて腕章だけでも取り外す。学校指定のシャツにタイ。少しだけ肌寒さがあった。ただ、それを感じていられるうちが華なのかもしれないけれど。
84: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/04/18(金) 11:58:33.12 ID:hodrlcSw0
再度光が迸った。あたしは跳んでくる全て、向かってくる全てに一瞥もくれず、ただひたすら光を追って全速前進。
ばちばち、がちがちと体に何かの破片や角や固いものが当たる。打撲で鈍い痛みが襲ってくる。息を吐き出して止まりそうになるのをこらえ、歯を喰いしばって、根性を見せてやるのだ。
腕章「ぐ、ぅ、はっ!」
85: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/04/18(金) 11:59:08.97 ID:hodrlcSw0
腕章「……」
気が付けば吐いていた。
86: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/04/18(金) 11:59:51.94 ID:hodrlcSw0
ぞわり、と鳥肌が全身を駆け巡った。あのやる気のない、生気の無い喋り方からは想像だにできない、惨状だった。
??「あぁ、見られちゃいまし、た」
87: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/04/18(金) 12:00:19.89 ID:hodrlcSw0
??「もう、誰にも、会いたくないで、す」
腕章「……最悪」
88: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/04/18(金) 12:01:08.80 ID:hodrlcSw0
詰襟「だぁからてめぇは人使いが荒いんだっつーの! 一応俺はてめぇの敵だぞ! 躊躇なく助けを求めるんじゃねぇよ!」
腕章「来てくれたじゃん」
235Res/273.82 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。