1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/05/11(日) 22:54:49.93 ID:rMT0qrsn0
「いらっしゃいませー」
機械的に応対するレジ打ちのアルバイトを片目に、私は店内の奥へと向かう。
仕事で遅くなった時は、いつもこうしてコンビニの惣菜コーナーで夕食を済ませてしまう事が多い。
一人分しか作らないのも寂しい物があるので、適当にハンバーグとサラダをカゴに入れ、レジへ向かう。
「427円です」
小銭入れから500円と端数の7円を出して、お釣りの80円を受け取る。
「ありがとうございましたー」
店を出ようとすると、壁に貼られた絵に目が行く。
母の日。
拙い筆跡で「おかあさんありがとう」と描かれた画用紙一杯の笑顔を見ていると、胸が引き裂かれるような気がして、慌てて絵から目をそらして逃げるように家に戻った。
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 22:56:20.38 ID:rMT0qrsn0
「……母の日、ね」
静まり返ったマンションの廊下を歩きながら、ポツリとつぶやいていた。
あの頃は、優や千早がコンビニに貼ってあったような絵を、学校から持って帰ってきていた。
肩から下げたバッグからキーケースを取り出して、玄関の扉を開く。
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 22:57:15.87 ID:rMT0qrsn0
「…………」
独り身になってからという物、料理という行為に対しての終着は薄れる一方だった。
家族の喜ぶ顔が見たいために作る料理では無い。
私が、生きていくための料理なのだから、必要な栄養が取れれば良いと言うだけの事。
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 22:58:33.65 ID:rMT0qrsn0
『おかーさん!みてこれ!』
『あら、何かしら』
『おかーさーんかいたんだよ!』
『あら……ありがとう、優、上手に書けたわね』
『おかあさん、これ』
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 22:59:24.56 ID:rMT0qrsn0
「……朝?」
少々のアルコールが、ここまで眠りにつきやすくしてくれるとは思わなかった。
休みとは言え、少し気を抜き過ぎていたようで、時計の針は10時を回ろうとしていた。
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 23:00:06.46 ID:rMT0qrsn0
「……誰かしら」
時計の針は4時を回ったところ。
宅配便が来るような物も頼んでいないし、誰かが来ることも在り得ない。
玄関の向こう側に居た少女の姿に、私は胸が高鳴ると同時に、締め付けられた。
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 23:00:37.04 ID:rMT0qrsn0
優の遺影と位牌に、私達は手を合わせていた。
優の墓前で、声を荒げた事もある。そんな過去を思い出しながら、私達は長い間、手を合わせていたような気がする。
テーブルの椅子に着いた私と千早は、お互いに何を切りだせばいいのか分からず、部屋には開け放った窓から入ってくる風と、道路を走る車の音が聞こえるだけだった。
取り敢えず、母親としてはこの状況をどうするべきなのかと考え、一先ずお茶でも入れようと立ち上がる。
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 23:01:23.59 ID:rMT0qrsn0
あの子が居なければ、今の千早はここに居なかったのかもしれない。
「そ、それでね……お母さん」
千早の口から出た「お母さん」と言う言葉に、私は思わずびくりとした。
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 23:03:41.01 ID:rMT0qrsn0
「ええ、良いわよ、好きに使ってちょうだい」
慣れない家事だからか、少々困り顔ながら、調理を進めていく。
こうして千早の料理する姿を見ていると、在り得たかも知れない私たち家族の関係が脳裏をよぎる。
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 23:04:22.04 ID:rMT0qrsn0
「……あっ」
こんなに近くで見る娘の顔は、大きくなったとはいえ、あの頃の面影はまだしっかり残っていた。
整った顔立ちは夫に似たのか、陰のある目線は多分私に似たのだろう。
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 23:05:26.30 ID:rMT0qrsn0
最初は気まずそうだった千早も、少しずつ笑みを浮かべる様になり、私も自然に話せるようになってきた。
自分が食べるだけでない、誰かの為の食事。人の温かみのある食事は、何年ぶりなのだろう。
テーブルの上に並んだお皿には、千早と二人で作ったハンバーグ。
誰かと向かい合って食べる食事も久し振りだ。
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 23:06:26.61 ID:rMT0qrsn0
時計を見れば、夜の9時を回ろうとしていた。
「明日も、収録が早いから……」
「そう……」
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 23:07:31.57 ID:rMT0qrsn0
「何?千早」
「また、来てもいい……?」
この子は、何を言っているのだろう。
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 23:10:56.75 ID:rMT0qrsn0
劇マス後を考えて、ちょっとでも千早と千種さんが歩み寄れたら。そんな事を考えるとぼかぁ涙が止まらんのです。
母の日で。カーチャンにドライヤープレゼントしました。妹も使うんだけどな!
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2014/05/11(日) 23:45:52.21 ID:Zktb0/jj0
おつおつ
千種さん、ちゃんとライブに来てくれていたのかなあ……。どちらにしろアニマスのときほど頑なではなくなっていると信じたい
あ、母さんに何もしてねえや。とりあえずメールはしておこう……
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/05/12(月) 02:53:43.63 ID:Hny4mHYqo
おつ
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/05/12(月) 05:43:26.71 ID:vGrBia8x0
乙
スレタイから涙腺からして刺激された
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2014/05/12(月) 18:49:47.02 ID:1YWFGPbf0
こういうストーリーを書ける才能が欲しいよ。
まな板で笑いそうになってごめんな
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