過去ログ - 千種「真赤なカーネーション」
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 22:56:20.38 ID:rMT0qrsn0
「……母の日、ね」

 静まり返ったマンションの廊下を歩きながら、ポツリとつぶやいていた。
 あの頃は、優や千早がコンビニに貼ってあったような絵を、学校から持って帰ってきていた。
 肩から下げたバッグからキーケースを取り出して、玄関の扉を開く。
以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 22:57:15.87 ID:rMT0qrsn0
「…………」

 独り身になってからという物、料理という行為に対しての終着は薄れる一方だった。
 家族の喜ぶ顔が見たいために作る料理では無い。
 私が、生きていくための料理なのだから、必要な栄養が取れれば良いと言うだけの事。
以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 22:58:33.65 ID:rMT0qrsn0
『おかーさん!みてこれ!』
『あら、何かしら』
『おかーさーんかいたんだよ!』
『あら……ありがとう、優、上手に書けたわね』
『おかあさん、これ』
以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 22:59:24.56 ID:rMT0qrsn0

「……朝?」

 少々のアルコールが、ここまで眠りにつきやすくしてくれるとは思わなかった。
 休みとは言え、少し気を抜き過ぎていたようで、時計の針は10時を回ろうとしていた。
以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 23:00:06.46 ID:rMT0qrsn0
「……誰かしら」
 
 時計の針は4時を回ったところ。
 宅配便が来るような物も頼んでいないし、誰かが来ることも在り得ない。
 玄関の向こう側に居た少女の姿に、私は胸が高鳴ると同時に、締め付けられた。
以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 23:00:37.04 ID:rMT0qrsn0

 優の遺影と位牌に、私達は手を合わせていた。
 優の墓前で、声を荒げた事もある。そんな過去を思い出しながら、私達は長い間、手を合わせていたような気がする。
 テーブルの椅子に着いた私と千早は、お互いに何を切りだせばいいのか分からず、部屋には開け放った窓から入ってくる風と、道路を走る車の音が聞こえるだけだった。
 取り敢えず、母親としてはこの状況をどうするべきなのかと考え、一先ずお茶でも入れようと立ち上がる。
以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 23:01:23.59 ID:rMT0qrsn0
 あの子が居なければ、今の千早はここに居なかったのかもしれない。
 
「そ、それでね……お母さん」

 千早の口から出た「お母さん」と言う言葉に、私は思わずびくりとした。
以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 23:03:41.01 ID:rMT0qrsn0
「ええ、良いわよ、好きに使ってちょうだい」

 慣れない家事だからか、少々困り顔ながら、調理を進めていく。
 こうして千早の料理する姿を見ていると、在り得たかも知れない私たち家族の関係が脳裏をよぎる。

以下略



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 23:04:22.04 ID:rMT0qrsn0
「……あっ」

 こんなに近くで見る娘の顔は、大きくなったとはいえ、あの頃の面影はまだしっかり残っていた。
 整った顔立ちは夫に似たのか、陰のある目線は多分私に似たのだろう。
 
以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 23:05:26.30 ID:rMT0qrsn0
 最初は気まずそうだった千早も、少しずつ笑みを浮かべる様になり、私も自然に話せるようになってきた。
 自分が食べるだけでない、誰かの為の食事。人の温かみのある食事は、何年ぶりなのだろう。
 テーブルの上に並んだお皿には、千早と二人で作ったハンバーグ。
 誰かと向かい合って食べる食事も久し振りだ。

以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/11(日) 23:06:26.61 ID:rMT0qrsn0
 時計を見れば、夜の9時を回ろうとしていた。

「明日も、収録が早いから……」
「そう……」

以下略



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