1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 08:37:41.86 ID:3xKP/jN8o
※ご注意
地の文形式・短め
ネガ気味のキャラオリ設定強め
ただ、オチは胸糞ではない、……はず
Pイチャ要素なし・百合もなし
『ボクはカワイイですからっ』
付けっぱなしだったテレビから流れてくるのは、聞き覚えのある甘ったるい声。
悪戯っぽい小悪魔じみた笑み、かわいらしい顔立ち、小柄な体躯。
確かに、自らをして可愛いと評するのも頷ける少女。
そんな同僚のことを、どうにも気に食わなくなったのはいつからだっただろう。
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 08:41:46.38 ID:3xKP/jN8o
よく考えたら誰得だがとりあえず書きたかったので仕方ない
「……ふぅ」
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 08:44:27.42 ID:3xKP/jN8o
(なのに……、なんでこうなるかな)
ともあれ、さっきもいった状況のことを話そう。
今、事務所には二人の人間がいる。
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 08:45:39.83 ID:3xKP/jN8o
自分にとって苦手な人間は、相手も自分を苦手に思う。
こと人の関係において真理は数あれど、これほど実感を伴うものはそう多くないだろう。
(……早くプロデューサー帰ってこないかなぁ)
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 08:47:05.65 ID:3xKP/jN8o
ミミミンミミミンウーサミン
「……」
「……」
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2014/05/26(月) 08:49:43.50 ID:3xKP/jN8o
ミミミンミミミン ピッ
「もしもし」
『杏、今事務所か?』
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2014/05/26(月) 09:09:55.44 ID:3xKP/jN8o
……最悪だ。
冗談や奇跡の類を、期待はせずに聞き返す。
「え……、マジ?」
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2014/05/26(月) 09:11:54.81 ID:3xKP/jN8o
「プロデューサー、渋滞に巻き込まれたって」
「……えっと。……仕事には?」
「間に合うようにするって。ちひろさんがくるらしいよ」
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:12:56.48 ID:3xKP/jN8o
「それじゃあ、ちょっとボクお茶を入れてきます」
「……はいはい」
「……」
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2014/05/26(月) 09:13:47.51 ID:3xKP/jN8o
普段杏は他人に対して悪口を言わない。
もちろん、人間性が優れているから、などという事ではなく。
そもそも他人にそんな感情を抱くことすら億劫なのだ。
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:16:12.62 ID:3xKP/jN8o
「そんなにボクがおかしいですか」
声を出していた自分の間抜けさを呪いながら、そんな様子はおくびにも出さず幸子に目を向ける。
「もうお茶入れたんだ、早かったね」
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:17:33.10 ID:3xKP/jN8o
既に何度目かわからない沈黙の訪れに、TVの音響が空虚に響く。
番組はクライマックスを迎え、さあどうなる、というところでいつもの山場CM。
妙に明るい15秒スポットを写す中、たまたま自分の出たものも混じっていた。
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:18:27.91 ID:3xKP/jN8o
「双葉杏。アイドル1やる気のないアイドル」
「人受けのいいように振る舞うわけでもなく、でも、嫌われるわけでもなくて。……むしろ人気の要因です」
「……あなたには、媚びた笑いを振りまいて自意識過剰と笑われるボクが、さぞ滑稽に映ってるんでしょうね」
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:21:14.47 ID:3xKP/jN8o
こちらを責めながら、幸子は笑っていた。
いつものテレビで見る余裕ぶった笑いとは違う、歪んだ笑み。
劣等感と優越感をない交ぜにした、泣いているような笑顔。
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:25:04.97 ID:3xKP/jN8o
「そりゃあわかんないよ。だって杏とキミは他人だもんね」
「でもキミに分からないこと、杏は知ってるんだ」
「……私さ、体小さいよね。まあ今はいろんな意味でネタになってるし、それで楽もできてるけど」
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:27:53.62 ID:3xKP/jN8o
「でもそれがあっても私はこんなところで燻ってる
頑張って、頑張ってさ。頭はクリア、体も動く。
いける、やれる。……今度は、違う。そこでいつも倒れるの」
「やになるよ。……少なくとも私はやになった。やってられるかーってなった
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:29:34.81 ID:3xKP/jN8o
だが。
「……だから、どうしたんですか」
努力を重ね、頂に手を掛けて。その上で才能の壁に打ちのめされた……、そしてなお頂に憧れ続けた少女には、それを認められない。
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:32:03.06 ID:3xKP/jN8o
言い合って、我をぶつけられ、ぶつけかえして腑に落ちた。
何となく苦手、何となくそりが合わない、ただ、何となく嫌い。
答えがわかってしまえば、なんと言うことはない。
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:33:28.68 ID:3xKP/jN8o
表に車の止まる音がした。
きっと、ちひろが迎えに来たのだろう。
「……ボクには、あなたが甘えてるようにしか見えません」
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:35:02.43 ID:3xKP/jN8o
……人は自分の持っているものの価値を見損ない、相手の持つものの価値を見損なう。
それぞれを小さく、そして大きく、相手をこそ恵まれていると。
だから神ならぬ身の人である限り、人は決してわかり合えない。
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/26(月) 09:35:41.61 ID:3xKP/jN8o
「本気、出してみようかな」
一言だけつぶやく。
自分も騙せないような薄っぺらな声音。
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