1: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 22:52:26.20 ID:jYhc2yQnO
禁書×ブラック・ブレットクロス。
地の文あり。遅筆ですので、のんびり書き溜めながらやっていきます。
両作品を噛み合わせるため、一部設定にはオリジナル・独自解釈が混入しています。
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2: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 22:56:47.77 ID:jYhc2yQnO
ババンバン! というゴム弾の鈍い銃声が、背中側から炸裂した。
強烈な衝撃に身体を押し出された土御門は、眼下に広がる河に投身しながら、激痛とともに気絶した。
……意識のない者が川の底に沈んだ場合、その生存確率は恐ろしく低いと言ってもいい。
3: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 22:58:18.18 ID:jYhc2yQnO
土御門元春は、自惚れではなく、顔が広い。
陰陽博士と呼ばれるほどの達人の域にまで専門の魔術を極め、しかし、様々な理由からそれを全て投げ捨てて学園都市に来た彼は、血の滲むような努力を下地に手回しをして、裏方に徹してきた。科学サイドと魔術サイド、その間に戦争が勃発しないように。
「聞こえているのかい?」
4: ◆2BIJ5nUpEk[sage]
2014/06/01(日) 22:59:06.17 ID:jYhc2yQnO
違う。
そんなことが聞きたいんじゃない。
彼はベッドの上で軽く身動ぎする。身体は動くようだった。
そしていつでも跳び起きることができるよう準備しつつ、もう一度問いかけた。
5: ◆2BIJ5nUpEk[sage]
2014/06/01(日) 22:59:46.41 ID:jYhc2yQnO
……疑うのはよそう。まずは情報収集からだ。
「ガストレアっていうのは?」
東京エリアは東京。民警は……字面から想像するに、国家権力が民間レベルに移行した組織か。
6: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:01:08.92 ID:jYhc2yQnO
嫌な汗が浮かぶ。きょろきょろと周りを見ると、枕元に愛用しているサングラスがあるのを見つけた。
現在着用している服は、とある高校の制服だ。内側にアロハシャツを着ているのはいつものことで、折紙や拳銃も……いや、危険物の有無は確認して押収されているか。せめて折紙があればと願う。
(…………、まずいな)
7: ◆2BIJ5nUpEk[sage]
2014/06/01(日) 23:02:15.16 ID:jYhc2yQnO
「いっ、てェ!?」
急な刺激に、身体が勝手に臨戦態勢に入る。
土御門は冷静な部分でそれを押さえつけ、突き飛ばしてしまった相手を改めて見る。
8: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:02:49.44 ID:jYhc2yQnO
「先生が拾ってきたのか……? 俺は里見蓮太郎だ。まぁ、よろしくな」
手を借りて起き上がった男、蓮太郎は握手したまま自己紹介をしてきた。
不幸な事態だが、こうなってしまった以上、必要以上に敵意を出し続けるのは危険だ。
9: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:03:23.87 ID:jYhc2yQnO
小室菫、里見蓮太郎とともに、薄暗く気味が悪い部屋の中で椅子に座り向かい合う。
気が付けば茶会のようなものが開かれていた。
冷静に、客観的に現状を分析してみると、どうやら自分は異世界に飛ばされたらしい。土御門はそう考えた。
そもそも魔術という存在も、異界の法則を無理矢理現存する世界に出力しているにすぎないのだ。
10: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:03:58.05 ID:jYhc2yQnO
「ガストレアっていうのは、ガストレアウィルスに感染して遺伝子を書き換えられちまった生物のことを言うんだ。ウィルスに感染したら、人間もガストレア化する」
里見蓮太郎は簡潔にそう言った。
女医の菫がそれに続く。
11: ◆2BIJ5nUpEk[sage]
2014/06/01(日) 23:04:46.09 ID:jYhc2yQnO
他にも、いろいろと聞いた。バラニウムという金属がガストレアの再生能力を阻害させることができたり、
そのバラニウムを集めた巨大な壁『モノリス』から放たれる特殊な電磁波がガストレアの進入を妨げ、構築された生存可能地域が『エリア』と呼ばれていたり、
10年前に起きたというガストレア戦争において、妊婦の体内に侵入したウィルスが胎児に取り付き生まれた、異常な身体能力を持つ『呪われた子供たち』についてなど。
民警──民間警備会社と呼ばれる組織が、その『呪われた子供たち』イニシエーターと、その司令塔であり精神的支柱ともなるパートナー、プロモーターとが二人一組となって、対ガストレアのスペシャトリストとして活躍しているのだそうだ。
12: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:05:22.76 ID:jYhc2yQnO
こほん。
土御門はポーカーフェイスで思案していると、あらかた説明も終わったため、次の矛先は正体不明な彼へと向けられた。
「それで、土御門くん。そろそろ君のことを話してもらいたいんだが」
13: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:06:22.13 ID:jYhc2yQnO
土御門はややあって、ようやく口火を切った。
「……オレはこの世界の人間じゃない」
「……は?」
14: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:07:14.51 ID:jYhc2yQnO
蓮太郎は「何言ってんだコイツ」という目で土御門を見ている。
対する菫は、顎に手を当てて考えるようなポーズを取っていた。
まずいな。
あまりに突拍子のない話すぎたか。
15: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:08:14.70 ID:jYhc2yQnO
背中の傷……雲川芹亜の『処刑』か。
彼はそこで気を失った。
気を失って……。
(……オレは、どうやってこの世界に来たんだ?)
16: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:10:39.38 ID:jYhc2yQnO
「……こっちは面白くないがな」
「まあそう言うな。これも何かの縁、或いは神の悪戯か。
ともかく、君は原因不明の何かによってこの世界に来てしまった。
能力だの魔術だのは知らないが、同じ人間だろう?
17: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:11:31.65 ID:jYhc2yQnO
「自信作だ。食べて見てくれ、蓮太郎くん」
「……先生、マトリックスって映画に出てくる『ゲロッグ』って食い物知ってっか?」
字面からして口にしたくないような名前だった。
18: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:13:10.75 ID:jYhc2yQnO
外に出てよく身体中を調べてみると、拳銃を始めとした手荷物は取り上げられていなかった。手持ちのものは折紙や拳銃、財布には数千円鎮座していた。
学園都市製の紙幣には内部にICチップが内臓されているが、さて、こちらで使ってもよいのやら。
もしものためにと体の至る所に隠していた約5万円ほどの紙幣も確認したが、最後に記憶にある河の水に塗れてシワクシャになっているわけでもなかった。
外の風景は、やはりというべきか、学園都市のそれではない。
19: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:15:31.21 ID:jYhc2yQnO
というか、これからどうすればよいのだろうか。
全財産は五万円弱。申し訳程度という額で、食費だけで言うなら数ヶ月は食いつなげられる。だが、住む家を用意して、お金を手に入れるために仕事を見つけて、暮らす?
この東京エリアとやらに戸籍はない。
ガストレア云々の話は聞いたが、こちらの世界についての常識はない。
20: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:16:10.10 ID:jYhc2yQnO
一目見て、土御門は硬直した。
巨大ディスプレイの映画で見るような怪物。
3DCG技術で飛び出てきたような化け物。
禍々しい赤々とした瞳、巨大な体躯、異質な姿形。
21: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:16:43.63 ID:jYhc2yQnO
土御門が硬直したのは、何も、その怪物への恐怖だけではない。
その目の前で尻餅をついている、青とも黒ともとれる髪色をした少女の存在が、彼の目線を釘付けにしていた。
なんだか見覚えのある風貌だった。
いや、知りえているはずはない。間違いなく初対面だが、その少女はどこか、彼が最も守るべき少女と似ているような気がしたのだ。
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