20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/07/24(木) 14:46:25.27 ID:9uLTT2Jd0
右の人差し指を頬に寄せ、少し考えて彼女は答えた。
「すごいなぁって、テレビを見て思ったりします」
「運動や、音楽に関する経験は、何かありますか?」
「運動、は全然ダメです。
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2014/07/24(木) 14:49:14.35 ID:9uLTT2Jd0
応接室のソファーに戻り、彼女に話を切り出す。
「音無さん――アイドルに、なってみたいと思いませんか?」
えっ――彼女の口から小さな声が漏れ、しばらく硬直した。
22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/07/24(木) 14:52:18.12 ID:9uLTT2Jd0
「お前も性格悪いぜ」
音無さんには後日、諸々の書類の提出をお願いし、今日のところは帰した。
彼女がいなくなった後、高木がコーヒーを片手に僕を茶化す。
23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/07/24(木) 14:55:41.36 ID:9uLTT2Jd0
アイドルの卵を探すには、フィールドワークが基本だ。
己の嗅覚を頼りに、求める子がいそうな場所を手当たり次第に訪ねていくしかない。
音無さんのようなケースは、初めてと言っても良いくらい非常に珍しいものだ。
ああいう出会いは、今後期待しない方が良いだろう。
24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/07/24(木) 14:58:46.01 ID:9uLTT2Jd0
「お客さん」
「へっ?」
喫茶店のマスターが、急に僕に話しかけてきた。
「相席、お願いしても良いですかね」
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2014/07/24(木) 15:01:05.20 ID:9uLTT2Jd0
優男は、以前として笑顔を崩さず、僕を見つめている。
彼の狙いが分からない。
「同業の方、とは――失礼ですが、どのようなお仕事を」
心情を悟られないよう、努めて冷静に、彼に聞いてみた。
26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/07/24(木) 15:04:20.13 ID:9uLTT2Jd0
「あなたは、どう思いますか? 同じプロデューサーとして」
おまけに面倒くさい男のようだ。適当にあしらっておくに限る。
「そうですね――私もそう思います」
「ありがとう。同じ志を持つ人に出会えて、嬉しいです」
27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/07/24(木) 15:06:43.73 ID:9uLTT2Jd0
彼の名刺を訝しげに眺めていると、先ほど閉まったばかりの店のドアが突然開いた。
「黒井、いるか!?」
入ってきたのは高木だ。この時間はレッスンのはずだが――。
28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/07/24(木) 15:08:57.16 ID:9uLTT2Jd0
だが、こういう事態は、ロクにスカウトできていなかった僕のせいでもある。
それに、まだ候補生だが、アイドルが一人もいなくなったわけでは無い。
「こうなったら、音無さんに賭けるしかないか」
椅子にもたれ、天井を見上げながら、僕は半ば諦めるように呟いた。
29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/07/24(木) 15:10:44.55 ID:9uLTT2Jd0
高木は難題が降りかかっても、さも簡単そうに言う。
実際、何だかんだで上手く収めるコイツの手腕に助けられたことも無いわけでは無い。
しかし、今回は、少なくとも僕にとっては程度が違う。
エレクトロニック・ダンス・ミュージックは、僕にとって隠し玉――最後の切り札だ。
30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/07/24(木) 15:13:51.97 ID:9uLTT2Jd0
二日後、音無さんが書類を持って事務所に来た。
未成年なので、契約に当っては保護者、つまり親の同意書等が必要になるのだが――。
ん――苗字が違う?
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