32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:05:06.81 ID:DL0z8tZuo
「どうして僕にプロデュースされたいと思った?」
それは予期せぬ質問だった。私はためらいがちにベッドの上へ戻って、
チェストに備え付けてあるラジオの電源を入れた。
ざあ、と冷たいノイズが足元へ落ちて行った。
33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:05:33.13 ID:DL0z8tZuo
――――
私の垂れ目は父譲りだ。
小学生の頃は、泣いていないのに泣き虫だと言われて嫌だった。
今も、相変わらず好きになれずにいる。
34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:06:09.18 ID:DL0z8tZuo
私と母とプロデューサーさんの三者面談は夕飯前に済んだ。
ご一緒にいかがですか、と母の言う社交辞令をかわして、プロデューサーさんは出て行った。
私は夕飯のビーフシチューを急いで飲み込んだ。
母はもしかしたら、カレーとハヤシライスとビーフシチューを、
35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:06:44.95 ID:DL0z8tZuo
お風呂から上がって髪を乾かし終えると、私はすぐに部屋へ戻った。
温もりの残る髪を払うと、シャンプーの匂いが鼻先へ掠める。
母の髪もきっと同じ匂いがするんだろう。
プロデューサーさんの強い勧めで、私立の学校へ転入することに決めた。
36:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:07:50.58 ID:DL0z8tZuo
――――
夢うつつの波打ち際で、私は膝をついて祈っている。
どうか許してください。私を罰さないでください。
37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:08:38.64 ID:DL0z8tZuo
――――
十二月が半分を過ぎる頃にはようやく、
越してきた部屋からもダンボールが片付き、新しい空気に慣れ始めた。
38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:09:09.96 ID:DL0z8tZuo
携帯電話も買い換え、アドレス帳にはプロデューサーさんと母の名前しか登録されていない。
以前のアドレス帳に何件登録されていたかは覚えていないが、これよりは多かったはずだ。
だからと言って、電話やメールがしょっちゅう来たわけでもないのだけれど。
越してきてからというもの、私の携帯電話はもっぱらキッチンタイマー代わりに使われる。
39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:10:15.43 ID:DL0z8tZuo
家事の合間に編み物。それとも、編み物の合間に家事。
マフラーが出来上がったら、早速首へ巻いて買い物へでも行こうかと目論んでいたのだけれど
――その不細工な形にため息をついた。
これなら、いも虫の方がよっぽどうまく糸を編む。
40:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:11:58.77 ID:DL0z8tZuo
携帯電話の画面には文句のように『不在着信が二件』と表示されている。
二件とも、知らない番号からの着信だった。母からでないことに、少しほっとする。
着信のあった時刻は三十分ほど前で、
プロデューサーさんだったら「こんな夜更けに」と申し訳なさそうに言ったのだろうか。
41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:13:23.20 ID:DL0z8tZuo
「あのね、えーと、佐久間さん」
「まゆで、いいです」
「ありがと! そう、えーっとね……まゆちゃん、明日暇?」
42:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:14:34.53 ID:DL0z8tZuo
「鍋がしたいって話したら、コンロとか鍋とか用意してくれるって言うから……」
「それじゃあ、プロデューサーさんの家で?」
「って思ったんだけど、それはまずいからってアタシの部屋に持ってくるってさ」
142Res/83.83 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。