7: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:25:12.15 ID:RN7L+xaq0
「ナア、君。小腹が空いたとは思わないかい」
チイちゃんの言葉遣いはなんとも奇妙で、
まるで何処か遠く街中の、綺羅びやかな歌劇団の男役がそこにいるかのようでした。
小さく可愛らしい彼女でしたが、その凛々しい顔立ちと語り口調は怪しい色気を放っていて……。
8: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:27:20.25 ID:RN7L+xaq0
「私はね、チットモ世間の事なんて知りもしないのだが、世界がアンマリにもまあるいのと、腹が空くとドンナニ辛いのかは、よおく分かっているんだよ」
建物が瑠璃色に変わっていきます。
辺りはスッカリと暗くなり、まるでこの世界には、妾とチイちゃんしかいないようでした。
アンマリにもまあるい世界の上で、チイちゃんは妾に話しかけてくるのです……。
9: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:29:59.64 ID:RN7L+xaq0
「どうだい、君。鼈甲飴……なんて物は、お好きかい?」
「エッ……飴、ですって……?」
「そうだ。私は甘い物に目がなくてね……特に、祭りで売られているヨウな、可愛らしい形の鼈甲飴が大好きなんだ」
10: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:32:19.78 ID:RN7L+xaq0
「良いです……それは、トッテモ……妾、食べたいですわ。甘くて美味しい、鼈甲飴が……」
「そうかい。じゃあ、行こうか」
「行く?……行くって、一体、何処へ?」
11: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:34:47.40 ID:RN7L+xaq0
「アハハハ……アハアハアハ……そう困った顔をするんじゃないよ。ナニ、祭りなどが無くとも、屋台の一つや二つはあるもんさね」
「ハア……そのようなものなのですか」
「そうさ。気の無い返事をしないでおくれよ。でっかいのはよほど、お遊びには疎いカタブツと見える」
12: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:36:45.01 ID:RN7L+xaq0
そのうちにチイちゃんは、ある一つの店の前で止まりました。
くたびれた暖簾が掛かった屋台です。
黄色く色が変わった暖簾なのですが、ボンヤリと灯った提灯の明かりを受けて、なんとも幻想的な雰囲気を醸し出しております。
まるで此の場所、此の空間が、此の世のモノでは無いかのようでした。
13: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:39:23.29 ID:RN7L+xaq0
暖簾の隙間から屋台を覗くと、色とりどりの鼈甲飴が見えました。
青、赤、緑、黄色にピンク……。
形だって様々で、動物の形を模した物や乗り物の形をした物、ハート、星形、ナニヤラ分からない形の物まで……。
驚くくらい様々な鼈甲飴が並んでいるのです。
14: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:41:44.44 ID:RN7L+xaq0
「妾、あたし……このような店は、何分初めての事ですので……」
「ああ」
「ここなのですね」
15: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:43:31.69 ID:RN7L+xaq0
チンドン、チンドン、チンドンドン……。
遠くでちんどん屋の鳴り物が聞こえます。
妾たちは早速、屋台の前で鼈甲飴を食べる事にしました。
16: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/06(火) 01:46:51.25 ID:RN7L+xaq0
妾は恐る恐る、舌先で飴を舐めあげました。
すると、どうでしょう。複雑な甘さと濃厚な香りが、口イッパイに広がったのです。
その味の凄まじさ……甘さ……美味しさとイッタラ……。
思い切って頬張ると、複雑な味が紐解かれるように、一つ一つの形となって、舌の上を滑ります。
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