過去ログ - 橘ありす「ハイエースと私」
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1:地の文注意です[saga]
2015/02/22(日) 07:19:37.52 ID:eYt1sT3M0

「いい車だったのにな……」


 Pさんはそう呟きながら、ハイエースのボンネットを叩きました。丸みを帯びたそれは打たれて響き、コンコン、と軽妙に音を立てました。


「売っちゃうんですよね」


「ああ。送迎にはもう使えないからな」


 つい最近のことです。女性がハイエースで誘拐されるという事件が起きました。


 私のいる346プロは世間体を考慮し、アイドルの足として機能しているこの車を買い換えることにしました。


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2:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:22:23.67 ID:eYt1sT3M0

「……もし、私が二十歳だったりしたら、この車はここにいられるんですか」


 無理だってわかっていても、聞かずにはいられませんでした。
以下略



3:名無しNIPPER[sage]
2015/02/22(日) 07:25:01.67 ID:yoeVAE7AO
キャラバンに買い換えるのかな?


4:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:25:11.38 ID:eYt1sT3M0

「なんでそんなの、車についてたんでしょうか。……Pさんの趣味ですか?」


「この車、会社の持ち物だから……、前に使ってた人がくっつけたまま、忘れちゃったんだろう。俺がこいつに乗った頃からくっついてたし」
以下略



5:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:26:02.73 ID:eYt1sT3M0

「……調べたワケじゃないです。薫さんがそう呼んでただけで」


「聞いてないぞ」
以下略



6:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:26:50.46 ID:eYt1sT3M0

<=//[:



以下略



7:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:28:16.41 ID:eYt1sT3M0

「あなたは何も悪くないのにね」


 キャップをしめて、ハイエースのライトを撫でました。手にすすがついたけど、かまわず撫でさすります。泣く子をあやす様にです。
以下略



8:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:29:04.87 ID:eYt1sT3M0

「あなたは口があったら、持ち主に、犯人になんて言いたいですか」


 バックドアに移動し、顔を押しつけます。
以下略



9:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:29:56.16 ID:eYt1sT3M0

このクッションは、ハイエースは、私をずっと見てくれた。


 車内で台本を読んで車酔いし、あわや大惨事になりそうになった時も。
以下略



10:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:31:07.91 ID:eYt1sT3M0

ドアをしめて、車の匂いにこもりました。私だけが使ってた車じゃなくて、346プロが女所帯だったからか、ほんのりと甘い香りがする。それがちょっとだけ息苦しいけど、不快ではありませんでした。


 もう、半分の身体と出会えない。現実が体幹からバランス感覚を奪い、身体をクッションに押しつけさせました。手足は私のものじゃないみたいに震え、自分の体重で押さえ込むのでやっとになりました。
以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:33:10.06 ID:eYt1sT3M0

<=//[:


「ついたぞ。収録、期待してる」
以下略



12:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:34:00.67 ID:eYt1sT3M0

「わからん話じゃないな」


Pさんはキーを引き抜き、降りる支度を始めました。私はその広い背中に、質問を投げかけました。
以下略



13:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:36:15.84 ID:eYt1sT3M0

 無菌状態の真白の砂漠を、オーロラの万華鏡が照らす酷寒地獄を、大地を焦がす灼熱のサバンナを、猛烈な湿気と生命が息吹く密林を走るハイエースの姿が、脳裏に浮かびました。

 誰の偏見にも苦しめられず、自らを必要としてくれる人に向けて、自分の力を証明し続けているはずです。使いつぶされることがマシンの本懐ならば、あの車はなにより幸せなハイエースかもしれません。

以下略



14:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:38:02.70 ID:eYt1sT3M0

 きっと私は、ハイエースのような大人になりたいのかもしれない。私は、理想の自分を車に見ていたんです。


 大きな陰がバックドアを開けて、私の前に入ってきました。
以下略



15:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:39:32.16 ID:eYt1sT3M0

「それを読み解くのだって、歌う側の仕事です」


胸を張って答えます。
以下略



16:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:40:40.93 ID:eYt1sT3M0

 Pさんは口と手を並行して動かし、私の荷物を持っていこうとしました。でも、もう大丈夫だと断りました。らんど君の暑苦しい笑顔が、遠い所にいるハイエースが私に送ってくれた激励なんじゃないかって、想像出来たからです。勘違いや思いこみであろうと、絆の実感が活力を生んでくれました。


「心配させてすみません。先に行って下さい。締めておきますから」
以下略



17:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:41:23.71 ID:eYt1sT3M0

 車をいったん降りて、それから運転席に座りました。目線がいつもより高くて、宙に浮いたような不安を感じたけれど、おぞましさよりも好奇心が強くなりました。


(私も運転してみたいな)
以下略



18:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:42:15.89 ID:eYt1sT3M0

「私だって負けません。私の名前は、私の名前です」


 だから、見守っていて。その二の句は省略して、らんど君に笑顔を送りました。らんど君を真似た、出来るだけ暑苦しい笑顔です。サムズアップするらんど君の笑顔が逆光に照らされて、より輝いて映りました。
以下略



19:名無しNIPPER[sage]
2015/02/22(日) 07:44:27.83 ID:TBWlGZwRo
ええはなしだ

東南アジアじゃ宝石のような存在らしいね>ハイエース


20:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 07:47:28.08 ID:eYt1sT3M0

ありすが「負けないぜ!ガンレオン」を熱唱する夢を見たから書きました。



以下略



21:名無しNIPPER[sage]
2015/02/22(日) 07:52:08.94 ID:4lw+AwVEO
海外ロケ行ったら346プロのロゴマークつけたハイエースと再会できたりしてな。
おつ!


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