過去ログ - 京太郎「限りなく黒に近い灰色」
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232: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:13:56.41 ID:py78Qnqv0
 パーティー会場に招待されているものたちの反応はいろいろだった。しかしほとんどの人は黙って聞いていた。わずかに鼻で笑っている人たちがいて、ほんの数人だけまったく違った行動をとっていた。

 会場のほとんどは、黙って聞いている人たちである。黙って聞いている人たちは同意しているから黙っているのではない。何がおきたのかさっぱりわからないから、話を聞いているのだ。いきなり始まった演説である。どういう流れの事件が起きているのか理解するために話を聞いていた。

 虎城やディーのように実際に襲われた人ならばすぐに嘘だとわかるだろう。特に松常久は悪魔に堕ちてしまっている。この事実だけでも、十分処刑される罪なのだ。
以下略



233: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:17:55.60 ID:py78Qnqv0
 龍門渕透華と井上純が騒がしくしていると、パーティー会場が静まり返った。会場の出席者たちがハギヨシの出現に気がついたのだ。

 パーティー会場にハギヨシが姿を現したところで、空気ががらりと変わった。会場にいた者たちは動きを止めて、言葉を吐き出せるものはいなくなった。演説を行っていた松常久も生き残りの黒服三人も黙り込んで動けなくなっていた。

 それもそのはず、会場に現れたハギヨシから漂う空気があまりにも剣呑だった。今まで汗だくになって騒いでいた松常久の汗が一気に引いて、青ざめるほどである。ハギヨシから発せられている空気は非常にわかりやすい主張がこもっていた。
以下略



234: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:21:26.46 ID:py78Qnqv0

 演技を続ける松常久に虎城が叫んだ。

「嘘だ! あんたたちはオロチにいた! 私たちを殺すために追いかけてきた! オロチを目覚めさせて混乱を招いたのを忘れたか!」

以下略



235: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:25:33.29 ID:py78Qnqv0

 この複数の幹部級の裏切り者というもしもがなければ、結末は松常久の処刑で終わるだろう。確実に誰かが始末する。

 ただ、始末されればそれでいいのだろうか。少なくとも傷つけられたもの、馬鹿にされたものが救われない。

以下略



236: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:29:24.88 ID:py78Qnqv0
 アンヘルは気の抜けた返事をした。

「へ?」

 まったく何がおかしいのかわかっていないようだった。アンヘルにしてみればまったく嘘などないからだ。
以下略



237: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:32:45.79 ID:py78Qnqv0
 
パーティー会場で面倒が起きているとスズリが話をすると、国広一はこういった。ずいぶん驚いていた。

「ハギヨシさんまで?」

以下略



238: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:36:31.84 ID:py78Qnqv0

 スズリに案内されて京太郎はパーティー会場に到着した。京太郎が会場の扉を開いたとき、すべての視線が、京太郎に注がれた。静まり返った会場だったのだ。そんなところで扉が壁にぶち当たっている。普通でもうるさい音なのに、静まり返っていたためにとんでもない騒音になっていた。

 扉を思い切り開いた京太郎は、扉を開いた格好のままでほんの少しだけ固まった。自分がいまいち加減ができていないのを忘れていたのだ。そしてお値段の高い扉をおそらく壊しただろうという予感で青ざめたのだった。

以下略



239: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:40:03.94 ID:py78Qnqv0
 松常久が「はじめまして」と答えたところで京太郎のワイシャツを虎城が引っ張った。京太郎の背中でうつむいている虎城も京太郎のたくらみを見破っていたのだ。

 そして虎城はすぐに京太郎が何をしようとしているのかも理解した。京太郎は自分の変わりに松常久を言い負かそうとしているのだと。だから止めようとした。松常久は無茶なことをやっているけれども、それなりに頭が回るのだ。

ここで印象を悪くして京太郎が不利益をこうむるのは虎城の望むところではない。
以下略



240: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:43:02.71 ID:py78Qnqv0

 虎城が京太郎の背中を叩いたところで、松常久はこういった。

「申し訳ないが、失礼させてもらう。気分が悪い。その女の処遇は後で決めようじゃないか。正々堂々とね。そして君の処分も、そうだろ? 魔人くん」

以下略



241: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:46:34.47 ID:py78Qnqv0
 京太郎に声をかけられたハギヨシがあわてて携帯電話を操作し始めた。今までの怒りは引っ込んでいた。京太郎の切り返しに頭が冷えたのだ。そして今、自分は何をするべきなのかを理解した。

いまするべきなのはエンブレムがどこにあるのかをはっきりさせること。ハギヨシならばエンブレムがどこにあるのかを調べられるのだ。だから急いで確認した。

 ハギヨシが調べている間、松常久は、自分の頭に手をあてていた。顔色は青を通り過ぎて白くなっている。絶望からか、目に光がない。松常久は終わりが近づいてきたのを感じているのだ。
以下略



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