2:名無しNIPPER
2015/03/31(火) 22:26:45.48 ID:UayEtmuS0
プロデューサーさん、お疲れ様でした」
俺はこの瞬間が好きなんだと思う。
アイドル達との別れ際、元気な声を聴いて明るい笑顔を見て、また明日も頑張ろうと思える力が湧いてくる、この瞬間が好きなんだ。
俺がアイドルのプロデューサーを始めてから、もう二年が経とうとしていた。
3:名無しNIPPER
2015/03/31(火) 22:27:35.45 ID:UayEtmuS0
「やっほー。今終わり?」
こちらに手をひらひらと振りながら、いたずらっぽく笑うのは塩見周子。
「ああ、今卯月を送ってきたところだよ」
4:名無しNIPPER
2015/03/31(火) 22:28:22.44 ID:UayEtmuS0
そして、俺を名前で呼ぶのも彼女だけだ。大手アイドル事務所にはプロデューサーをハニーの愛称で呼ぶことで有名な娘もいるが、周子はその辺の区別をつけてくれているので好きに呼ばせている。
こんなに可愛い娘から名前で呼ばれるんだ、嫌なわけがない。
「あたしはPさんの誘いを受けてアイドル始めたっていうのに…」
5:名無しNIPPER
2015/03/31(火) 22:29:02.88 ID:UayEtmuS0
「だってさ、あたしも少しは遠慮しなきゃなーって思うし、ね?」
「ね?じゃない」
ちくしょう、可愛いなぁ!とは口に出さない。別のアイドルに言ってしまった苦い経験が喉奥で言葉を抑える。そのアイドルは調子に乗り、ボクはカワイイと今でも言い続けているので、そんなのが増えるのはごめんこうむりたいのだ。
6:名無しNIPPER
2015/03/31(火) 22:30:03.77 ID:UayEtmuS0
「……だよね」
もちろん担当アイドルに手を出そうとは微塵も思っていない。思っていないが、明確には周子はまだアイドルではない。
「……てる?」
7:名無しNIPPER
2015/03/31(火) 22:30:36.62 ID:UayEtmuS0
「周子ちゃんが話しかけてるのに無視って酷いなー」
口調は軽いが、目は怒っている。
「悪い、考え事をしてた」
8:名無しNIPPER
2015/03/31(火) 22:31:15.70 ID:UayEtmuS0
「お腹空いたーん」
テーブル席に向かい合って座る。
周子曰く、まずこの掛け声をしないと始まらないらしい。
関西の方の方言で『お腹が空いたんだよ』を可愛くアレンジしたとのこと。
9:名無しNIPPER
2015/03/31(火) 22:32:07.28 ID:UayEtmuS0
「きたきたー」
メロディと共にお寿司が三皿流れてきた。
「それだけで足りるのか?」
10:名無しNIPPER
2015/03/31(火) 22:32:50.34 ID:UayEtmuS0
そんな恥ずかしがる周子が可愛いと思っていたら、口をついて出てしまった。
お寿司を食べようとした周子の手が止まり、開いた口はそのままで見開いた目が俺を捉える。
突然のことに、言った俺自信パニクっている。
周子は瞬きもせずに俺の方を…あ、瞬きした。
11:名無しNIPPER
2015/03/31(火) 22:33:29.71 ID:UayEtmuS0
「聞こえなかった?嬉しいって言ったんだよ」
幻聴などではないらしい。
目の前の可愛い女の子が、俺が褒めたら嬉しいって言ってくれた。
あ、これラノベのタイトルにできそう。
12:名無しNIPPER
2015/03/31(火) 22:34:10.31 ID:UayEtmuS0
すっかり辺りも暗くなって、公園には俺と周子の二人だけだ。
ベンチに座って俯く周子が今どんな顔をしているのかよく見えなかった。
逆に、俺はどんな顔をすればいいのかわからなかった。
「ごめんな、周子…」
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