4:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/16(火) 00:18:24.44 ID:rcfS4V6Mo
 「この前も言ったでしょう、携帯を携帯しなくてどうするんですの。緊急の用事とかあるかもしれないのに」 
  
  
 「私に緊急の用事がある人なんていないよ〜」 
  
5:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/16(火) 00:19:09.33 ID:rcfS4V6Mo
 櫻子の声が消えると、部屋はまた静寂を取り戻します。 
  
  
 すやすやと寝息をたてる楓に「ごめんなさいね」と静かなテレパスを送り、跳ね除けた毛布をもう一度かけなおします。 
  
6:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/16(火) 00:19:43.78 ID:rcfS4V6Mo
 あの調子だと、櫻子はきっと日付が変わってもしばらく起きているのかもしれません。そんなだから授業中寝ちゃうのに……でも朝は比較的しゃっきりしているし、そんな櫻子をねたましく思いながら気だるい身体を引きずって、私は明日も学校に向かうのでしょう。 
  
  
 単語練習したかぐらい、聞いとけばよかったかしら。あと体育着のことも……そういえば櫻子って、普段しゃべってるときも電話のときも、あんまり声が変わらない子ですわよね。 
  
7:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/16(火) 00:20:16.97 ID:rcfS4V6Mo
 ― 
 ―― 
 ―――― 
 ―――――― 
  
8:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/16(火) 00:21:44.67 ID:rcfS4V6Mo
 あの子って、結構普段から用も無いのに誰かに電話したりするのかしら。 
  
  
 赤座さんは寝てると思いますけど……吉川さんあたりと軽く話したりすることって、ありそう。 
  
9:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/16(火) 00:22:25.69 ID:rcfS4V6Mo
 え、えっ!? 押しちゃった!? と驚いている頃にはもう、ぷるるる……と呼び出し音が鳴ってしまっていました。 
  
  
 あわてて切ろうとするときまでに、繰り返されたコール音は4回。時すでに遅し。 
  
10:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/16(火) 00:23:29.29 ID:rcfS4V6Mo
 「昨日電話くれたでしょう? だから、そのお返し」 
  
  
 「お返し、って……」 
  
11:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/16(火) 00:24:16.40 ID:rcfS4V6Mo
 「ま、まあ、話したいことがあったらいつでも話せますもんね。わざわざ電話しなくても……」 
  
  
 「うん……」 
  
12:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/16(火) 00:25:27.52 ID:rcfS4V6Mo
 昨日の電話のお礼、用も無いのにする電話。間違ってかけてしまったとはいえ、こんなに恥ずかしいものだとは思いませんでした。 
  
  
 あの子が昨日かけてきた電話に、こんな恥ずかしさは無かったはず。同じような電話なのに、なぜ私はこんな想いをしなければならないのでしょう…… 
  
13:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/16(火) 00:26:03.97 ID:rcfS4V6Mo
 ― 
 ―― 
 ―――― 
 ―――――― 
  
14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/16(火) 00:26:33.69 ID:rcfS4V6Mo
 今朝、小さな覚悟を決めて玄関を出ると、ちょうど櫻子も家から出てきたところでした。 
  
  
 靴をとんとんと整える櫻子をまず見て、トゲがもう一段階深く刺さった気がしました。おはようございますと声をかけると、「うん、おはよ」とだけ返ってきました。 
  
50Res/44.78 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
板[3] 1-[1] l20 
	このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
	もう書き込みできません。