13:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:44:29.80 ID:d3Zd/SN00
そして、Pさんは言った。
モバP「泰葉。また、話したいか?」
泰葉「……え?」
14:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:45:15.98 ID:d3Zd/SN00
05
遠くからタッタッタッと小走りする音が聞こえた。その音に顔を上げると、そこにはお兄ちゃんが居た。
15:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:45:58.64 ID:d3Zd/SN00
桃子「バカ、バカ、バカっ。……桃子を一人にしないでよ……桃子のことを、見捨て、ないでよ」
グリP「桃子……」
桃子、何言ってるんだろう。わからない。でも、お兄ちゃんが悪いんだ。ぜんぶ、お兄ちゃんが悪い。
16:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:46:41.04 ID:d3Zd/SN00
06
グリP(……寝た、か)
17:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:47:14.73 ID:d3Zd/SN00
グリP(しかし、なら、いつ、どこで?)
プロデューサーは考える。残りの可能性として考えられるのは、仕事の後。桃子が自分を待つまでの時間。その中で何かあったと考えるべきだろう。これは桃子の言葉からもわかる。自分が予定通りに来ることさえできれば、何も問題はなかったのだ。事情があったとはいえ、プロデューサーはそのことを許せなかった。自分のせいで桃子が……そう考えると、たまらなく自分自身のことが嫌になった。
しかし、そんなことをしていても桃子の心の傷が癒えたりすることはない。原因を探らなければならない。まずは、今日、ここで仕事をしていた人のことや、何かあったか見かけた人は居ないかを聞き込み――
18:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:48:26.86 ID:d3Zd/SN00
07
泰葉ちゃんは桃子の憧れだった。
19:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:49:16.42 ID:d3Zd/SN00
――でも。
監督「君たちはそこに立っているだけでいいから。いいかい? 何も話さず、ただ、立っているだけでいい」
桃子たちに向かって、監督は言った。そのシーンは、主人公一家の娘役である泰葉ちゃんと、その母親、それとそのママ友役の人たちがメインのシーンで、桃子たちはそのママ友役の人たちの子ども、という設定だった。確かに台本を見ると後に緊迫したシーンもあるのだが、そのカットはただの日常風景のシーンだった。そんなシーンで、『立っているだけ』?
20:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:49:51.86 ID:d3Zd/SN00
だって、桃子の言葉に、その監督は怒ったのだから。
「子どもが何を言っている」だの「何がわかる」だの「俺の演出にケチを付けるつもりか」など色んなことを言われた。周囲の様子を観察する限り、これはこの監督にとってそれほど珍しいことではないようだった。さすがに桃子は子どもだったから、止めてくれる人も多かったけれど、その中には『呆れ』のような感情が大きく含まれているような気がした。
監督の言葉に桃子は反論したけれど、それでも監督は桃子の言葉を否定したし、周りの人は桃子をたしなめた。あの監督よりも桃子の方が簡単に折れると思ったのだろう。周りの人はとても困っている様子だったし、苛立っている人も居たように思えた。だから、桃子は仕方なく、折れることに――
21:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:51:09.51 ID:d3Zd/SN00
監督「……はぁ?」
監督の声のトーンが明らかに下がった。先程までよりも不機嫌な声。
監督「泰葉ちゃーん。いくら君が天才子役でも、大人には大人の演出ってものがあるんだよ。それに、このくらいでそこまで変わらないって。それとも、君、降ろされたいの? 子役なんて誰でも一緒だし……まだ、一話だし。降板させても、いいんだよ?」
22:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:51:53.16 ID:d3Zd/SN00
でも、そんな心配は必要なかった。
泰葉「……本当に、いいんですか?」
泰葉ちゃんは言った。その声には、なにか、力を感じた。
23:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:52:56.91 ID:d3Zd/SN00
それは、ただの子役が言ったのなら、『生意気』だとしか思えなかっただろう。
実際、その言葉はどれだけ実力があったとしても『生意気』な言葉だった。何様だと思われても仕方ない言葉。
でも、それでも――泰葉ちゃんのその言葉は、『生意気』だなんて思うことすらできない何かがあった。
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