過去ログ - 提督「この世界にいらないもの?」
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10:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:38:22.26 ID:NYc+OQMZ0
「じゃあ血の繋がりのない夫婦は家族になれないじゃないか」
「それは子供を介して間接的に血の繋がりを持つっぽい。子供がいて初めて家族になるっぽい」
「養子はどうなるの?」
11:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:39:23.26 ID:NYc+OQMZ0
結局そこに行き着くのだった。どこぞの書物では感情に関する判断、趣味判断は客観性を要請する主観的判断と定義づけられているが、わかったようでわからないものだ。共感を求める個人的判断というのは一種の奇跡ではないのかと思う。
これこれを好ましいと思う。個人的判断だ。他者がそれを否定しても問題はない。他者がそれに賛同するのはある種の偶然であろう。その偶然を要請しなければならない個人的判断とは厄介。もちろんそれは相手を無理強いに頷かせる傲慢さとは別物だから、残された道は他者と一致する判断センスを身につけるということになるだろう。
でも、どこかおかしく感じる。正解のある個人的判断というのは既に個人的判断ではなく、数学と同様客観的判断になっているように思うからだ。
12:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:40:02.43 ID:NYc+OQMZ0
「ねえ、夕立。プラナリアのことだけど」
「え? プラナリア? ………ああ、あれね」
ついさっきの話題なのに、もう夕立の中では完全に過去のものとなっているらしく、反対に食事中にプラナリアの話なんてと若干非難の視線も時雨に向けた。時雨としてもまあ確かにそうだなと反省したが、口にしてしまった以上引き返すなんてこともしない。
13:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:40:39.93 ID:NYc+OQMZ0
「どういうことっぽい?」
「愛というのは相互作用の産物だからね。こちらが愛ゆえの行為をしても相手がその同じ価値観を持たなかったら愛なんて成立しないでしょ? だったら、同一の価値観を持っている二匹のプラナリアこそが一番完全に愛を伝達できるじゃないか。まあ、彼らが愛し合うかどうかはわからないけどね」
「でも、ドッペルゲンガーみたいな相手との恋愛なんてすぐに飽きそうっぽい」
14:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:41:15.68 ID:NYc+OQMZ0
「あの話はまだ弱い抵抗っぽい。家の問題が障害となっていただけで、二人は愛を確かめ合えていたのだから」
「へえ。じゃあ、もっと強い抵抗があるってことか」
「互いに嫌いあっているのがもっとも愛の障害っぽい」
15:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:42:14.43 ID:NYc+OQMZ0
「燃えるような愛がそもそもないことこそ愛にとってもっとも障害になるっぽい。だから、一番燃え上がるっぽい」
「僕にはまったく想像できないよ。そういう場合はそもそも初めの歩み寄りさえないからね。障害を乗り越えようとするから愛も持続するのはわかるけど、嫌いあっているんだから、その障害を乗り越えようと思うことさえないだろうね」
「小説では嫌い合う関係からいいところを見つけて好きになっていく過程が多いけど、この場合は嫌いあっている時点で愛し合っていけないといけないっぽい」
16:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:42:55.96 ID:NYc+OQMZ0
一般論から急に矛先が自分個人に向いたことに夕立は微妙な表情を見せた。日常的なバカ話というのは、自分には無関係だと思えるからこそ、突拍子もなく一般を馬鹿にしたり笑ったりで楽しめるものだ。自分をその一般の中に参入させて話しているわけでない。もし自分に関わりのあることだと注意しながら話すのならば、もっと慎重になったであろう。
野となれ山となれと適当に口走った命題を自分に適用されることに些か不満げな顔を夕立は隠そうともしなかった。でも、もしかしたらデザートのアイスクリームで頭痛をおこしその痛みで厳しい表情を見せているだけかもしれないとも時雨は思った。
時雨には時折夕立が何を考えているのか判断しかねることがあった。そもそも何も夕立は考えていないのではないかと考えることもある。そう思うと次には妙に気を利かしたこともするしで、よくわからない。
17:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:43:44.57 ID:NYc+OQMZ0
「夕立、人間間の恋愛における障害が乗り越えられると言うならば、前に挑戦してみた手作り料理にもう一度チャレンジしてみたらどう?」
「え、料理?」
夕立のスプーンがとまった。手作り料理で連想されることを思い出しているのだ。そして、嫌そうな顔をした。以前に失敗したことがあるのだ。
18:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:44:25.69 ID:NYc+OQMZ0
時雨は夕立と長い付き合いだが、夕立のことを「繊細」と形容する日がくるとは夢にも思わなかった。この繊細さは危ういものだ。
時雨はよもや夕立が引きこもるなんて夢にも思わなかった。夢にも思わなすぎだが、そもそも夕立が一人の男性を思い浮かべて上の空に体をくねらせる事自体を時雨は夢にも思わなかったのだから、一連のことを夢にも思わないのは当然のことだった。
夕立は料理で失敗したからってだけで引きこもろうとしたわけではない。夕立は出撃でも大破を繰り返したのだ。その原因は提督との甘い恋愛の空想にふけっていたからであって、夕立はそれをやめなければならないと知りつつもついぞそれを止めることが出来なかった。
19:名無しNIPPER[saga]
2015/07/27(月) 15:45:01.19 ID:NYc+OQMZ0
提督との甘い空想は夕立の無能さをただちに夕立自身に思わしめ、提督とそういう恋愛関係にはなれないのだと、その資格はないのだと夕立に突きつけてきた。淡い純真な期待こそがその期待を裏切る結果となる。
夕立の気持ちはその場で空転しどこにも行くことができなくなっていた。それを繰り返しているうちに、夕立は無気力さを身につけた。どうにもならないならば、どうにかしようと思わないことだと。
時雨や他の仲間と話す時の夕立は時雨からしてみても普段通りだった。その普段と変わらないピエロのように明るい笑みの裏側でどのような侵食が行われているかは気づきようもなかった。
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