過去ログ - 新選組〜あるいは沖田総司の愛と冒険〜
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92:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/12(月) 00:57:53.90 ID:NeZ8MqDRO

タクシーは一台もない。やむなく近場のタクシー乗り場まで行こうと決め、エントランスの階段を下りて駐車場に足を踏み出したところ、こちらに後部を向けて止まっている黒いワンボックスカーが目に入った。

プライバシーガラスを嵌めたリアウインドーの奥で何かがうごめいている。嫌な予感がして、とっさに距離を取ろうとしたが間に合わなかった。
後部ドアが開き、紺色のジャージを来た屈強そうな男が5人飛び出してきた。
以下略



93:名無しNIPPER[saga]
2015/10/12(月) 01:10:29.56 ID:NeZ8MqDRO

万事休す。俺は囚われの身になった。

両脇を抱えられるようにして、後部ドアからワンボックスカーに押し込まれる。後部座席はいかにも護送車然として、窓を背にしたシートが向かい合わせになっていた。俺は運転席に向かって右側に黒人二人に挟まれて座った。

以下略



94:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/12(月) 01:17:18.44 ID:NeZ8MqDRO

車はフリーウェイに入ったらしく、かなりのスピードを出している。男たちは厳命されているかのように、互いにいっさい口をきかなかった。


妙だ。車が長い上り坂に入っている。
以下略



95:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/12(月) 02:07:17.27 ID:NeZ8MqDRO

車が右に旋回し、坂を下っていく。フリーウェイを下りたらしい。

首を回して背後の窓を見ると、鬱蒼とした木立の濃い影が、切れ目もなく流れている。
いつまで眺めていても、人家が見えてきそうな兆しさえない。心臓が拍動を速め、額に冷たい汗がにじみ始めた。
以下略



96:名無しNIPPER[saga]
2015/10/13(火) 00:18:14.11 ID:fDjbuMnwO

……俺はしばらくの間、飼い主に置き去りにされた犬みたいに、ワンボックスカーが去った闇の方向を凝視していた。
とりあえず俺は、どこかに監禁されたり、重りを付けて太平洋に沈められたりはしなかった。


以下略



97:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/13(火) 00:32:29.41 ID:fDjbuMnwO

動物マスクの男たちは身じろぎもしない。

通路の先には東アジア風の楼門があった。瓦屋根の廂の下、漆塗りの一枚板に文字を彫り込んだ扁額が見える。俺は目を凝らしてそれを読んだ。

以下略



98:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/13(火) 00:46:45.14 ID:fDjbuMnwO


無理にでも戻ろうとすれば危害を加えられそうな気がして、やむなく俺はタキシードの獣人たちが進入を急かしている楼門の方へ足を進めた。

獣人たちが、前を通り過ぎる俺の進行方向へゆっくりと首を回す。通路に沿って左右対称に並べられた4対の手は微動だにしない。
以下略



99:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/13(火) 00:53:32.61 ID:fDjbuMnwO

門を抜けて50メートルほど先に、古い写真でしか見られないような瓦葺き屋根の木造建築物が、闇の中に濃い影を屹立させている。
その高さは優に3階建てはあると思われた。

総領事館と名の付く公的施設が、こんな外観の建物に入居していることはまずあり得ない。
以下略



100:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/13(火) 00:59:47.74 ID:fDjbuMnwO

そして──そんな無闇に広く明るいホールの中央で、大道芸の道化じみた風体の男が一人、一輪車を乗り回していた。

その男が俺を一瞥し、両手でバランスを取って輪を描きながら叫ぶ。

以下略



101:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/13(火) 01:26:00.12 ID:fDjbuMnwO

「お前は、総領事ならば通常、このような風体でこのような振る舞いは絶対にしないと思い込んでいるな? だがそういうものではないぞ。俺はな、そんじょそこらの総領事とは違うのだ! 特別な総領事なのだ!」

「その通り。このお方はいわば、『総領事一般』なのだ!」

以下略



102:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/13(火) 01:33:52.66 ID:fDjbuMnwO

茫然と立ち尽くす俺は、自分に声をかけられているとはすぐに気付かなかった。


「私……?」
以下略



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