6: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/11(金) 02:01:56.74 ID:wxXgwuIMo
「そうだねぇ。練習はずっとしてたよ」
もそり、とジャムとバターの乗ったトーストをかじる。口内にわずかなしょっぱさとイチゴの甘味が広がっていく。
やはり穂乃果は、独学で練習していたようだ。独学、といっても今の時代ある程度の情報は手に入る。変な癖もついていないようだったし、ちゃんとした練習を積んだのだろう。
7: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/11(金) 02:02:22.47 ID:wxXgwuIMo
「それで、今日はどうするの?」
トーストを牛乳で流し込んだ穂乃果がいう。今日は日曜だったか。
取り立てて、何がしたいというわけでもない。突発的な家出で、何か考えがあるわけではなかった。
8: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/11(金) 02:03:18.80 ID:wxXgwuIMo
μ's解散に対する後悔はない。だけど、どこかで続けていたらと考えてしまう。
もうスクールアイドルと名乗れない立場になってしまったからこそ、そう思ってしまうのか。
現状に不満はない。いや、あるにはあるが、嘆くほどではない。ただただ、不安なのだ。
9: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/11(金) 02:03:55.90 ID:wxXgwuIMo
「やっぱり、真姫ちゃんのピアノはいいね。とっても素敵」
一曲弾き終えると、いつの間にか隣に座っていた穂乃果が拍手をしてくれる。
少し、複雑だ。穂乃果の賞賛を受けられるほどの演奏だっただろうか。
10: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/11(金) 02:04:27.97 ID:wxXgwuIMo
穂乃果と連れ立って外を歩く。
今日一日だけ穂乃果の服を借りることにした。そもそも寝巻きで家を飛び出してきたからそうするしかなかった。
丈が少し短いが、まぁ許容範囲だろう。
11: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/11(金) 02:05:11.67 ID:wxXgwuIMo
忘れていた。
目の前にできた人の列を見てため息をつく。
「あ、ありがとうございます! 一生大事にします!」
12: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/11(金) 02:05:43.93 ID:wxXgwuIMo
「お疲れ様」
「ん、ありがと」
エスカレーター付近に設置されたベンチで休息を取る。穂乃果が自販機で買ってきてくれたジュースで喉を潤す。
13: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/11(金) 02:06:20.07 ID:wxXgwuIMo
「穂乃果は、アイドル続けようとは思わなかったの?」
穂乃果がスクールアイドルを引退してから、ずっと気になっていたことを口にする。
穂乃果は自身の進路についてほとんど口にしなかった。いつも能天気に振舞って、だけど準備だけはしていて。
14: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/11(金) 02:07:03.87 ID:wxXgwuIMo
「私、一人じゃなんにもできなかったからさ。だから海未ちゃんとかことりちゃんとかに頼ってばっかりで」
「それが普通じゃない? 一人でなんでもできる人なんていないわ」
「そうかもね。皆に頼って、皆の力を借りて。それで、なんていうか、自信がついたのかな」
15: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/11(金) 02:07:33.46 ID:wxXgwuIMo
お昼ごはん。フードコートの一角でハンバーガーを齧る。エビカツの甘味とタルタルソースの酸味、キャベツのシャキシャキとした食感が口の中で混じりあう。
味はそこそこ。美味しいが、予想の範疇を超えない。チェーン店なんてそんなものかもしれないが。
ちらりと対面を見る。そこには当然同じようにハンバーガーを口にする穂乃果が居て、楽しそうにニコニコと笑みを浮かべている。
16: ◆tXSQ21DKYs
2015/12/11(金) 02:08:19.07 ID:wxXgwuIMo
目的を済ませ、ついでに夕飯の買い物をして穂乃果の家に戻る。
日はすでに傾き始めていて、その光を徐々に赤く染めつつある。生ぬるい風がひんやりとしたものに変わり部屋の中を通り抜けていく。
「そんなところで寝たら風邪引くよー?」
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