過去ログ - 真「二人の幸せのために」
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64:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 21:20:40.26 ID:XmKtMl4U0

雪歩と以前の様な関係に戻るまでに、それほどの時間はかからなかった。勿論、友達としての関係だ。それを二人は望んでいたのだから……友達に戻るのはそう難しいことではなかった。

友達として適切な距離、適切な会話、適切な接し方。何もかもが元通りになった。恋人としての時間なんて無かったかの様に振舞うボク達。
それを悲しく思わないわけではなかったけれど、あの時に出来た傷はまだ生々しく胸に残っていて、すぐに触れることは躊躇われた。


65:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 21:22:36.49 ID:XmKtMl4U0

以前と変わった事は一つだけ。雪歩が事務所に戻ってきた時から変わり始めた事――雪歩とプロデューサーの関係だけだ。
多分、皆は気付いていない。それどころか、もしかしたら当の本人達ですら気付いていないのかもしれない。そんな些細な変化だった。
でも、誰よりも長く雪歩の側にいたボクには……その視線を受けてきたボクにはわかってしまった。
雪歩がプロデューサーを見つめる目。それは特別な人を見つめる目だ。
以下略



66:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 21:24:35.58 ID:XmKtMl4U0

月日が経つほどに、雪歩の世間話の中にプロデューサーが登場する頻度が増える。プロデューサーについて喋る時の雪歩の表情が和らいでいく。

1年が経過する頃には、雪歩がプロデューサーに恋をしているのはほぼ間違いないように思われた。

以下略



67:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 21:29:17.42 ID:XmKtMl4U0

「プロデューサーが好きなの?」と尋ねると、顔を真っ赤にして否定の言葉を口にする雪歩。
ボクはそれを軽く受け流して、二人の仲を応援している事を告げる。

「ボクに協力できる事があったら何でも相談してよ。」と、笑いながら胸を叩く。
以下略



68:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 21:31:52.47 ID:XmKtMl4U0

雪歩と本当の友達に戻るため、二人の恋を成就させようとボクは陰ながらできるだけの支援をした。雪歩とプロデューサーが二人きりになれる場を作ったり、雪歩を意識させるような会話をプロデューサーに軽い感じで振ってみたり……。
プロデューサーがいくら鈍感でも1年近くもその攻勢が続けば流石に雪歩の気持ちに気付いたらしい。それからの展開は想像以上に早かった。元々似た者同士の二人、性格の相性が良かったのだろう。

“アイドルとプロデューサー”という一線を守りたいからなのかプロデューサーは雪歩に告白したりしないし露骨にベタベタする事もないけど、二人が特別な関係にあるのは事務所内では周知の事実……という状況にまでなった。
以下略



69:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 21:33:46.48 ID:XmKtMl4U0

何もかもが順調に運んで幸せそうな雪歩の笑顔を見ていると、雪歩に対して抱いていた後ろめたさが消えてゆくのを感じた。あの時の償いが出来た気がしてホッとする。
雪歩が許してくれても、ボクは自分自身をまだ完全には許せていなくて……友達のはずなのにどうしても雪歩に一歩引いた接し方をしてしまう自分が嫌だった。

だけどこれでやっと本当の友達に戻れる。本当の笑顔を雪歩に向けられるんだ。
以下略



70:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 21:36:42.11 ID:XmKtMl4U0

――それから1年後――

ボクは事務所の応接室のソファーに座って小説を読んでいた。窓から差し込んでくる春の柔らかい日差しがボクを包んでいて、なんだか眠たくなってくる。
小説に目を落としながらも内容は頭に入らずボンヤリとしていると、コンコンとノックの音が聞こえ、応接室のドアが開いた。雪歩だ。
以下略



71:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 21:39:28.96 ID:XmKtMl4U0

「真ちゃんどうしたの?早く行かないと遅刻しちゃうよ?」

首を傾げながら訝しげにボクを見つめる雪歩の言葉にハッとして急いで準備をする。

以下略



72:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 21:41:48.77 ID:XmKtMl4U0

早くプロデューサーの所に行きたいのか、少し急ぎ目に先を歩く雪歩に引っ張られる様に歩を進める。

その後姿を見つめながらボクは胸が掻き毟られる様な想いに囚われていた。

以下略



73:名無しNIPPER[saga]
2016/02/13(土) 21:44:41.48 ID:XmKtMl4U0

皮肉な事に、ボクが雪歩への思いに気付いたのはプロデューサーがきっかけだった。

プロデューサーを想い、想われる関係が続くうちに、雪歩はどんどん綺麗になっていった。外見ではなくて内面から溢れ出るような美しさを身に付けていった。
これが“本物”の関係の力なんだろうかと思ったりして、“偽物”の関係を続けない決断をした自分の判断は正しかったのだと安心した。
以下略



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